中国で発生した新型コロナウィルス、国内においては感染拡大も落ち着きを見せつつあり、明日からは県境をまたいでの移動なども解禁される流れとなっています。
一方で、これから来年に向けて中長期的に今後どのようなことが起こりうるのか、我々は常にそのようなことを念頭に置きつつ政策の立案・決定を行っていかなくてはなりません。
今後の極めて重要なキーワードとしては、「経済的な不況はこれからやってくる可能性が高い」「10月末以降今年前半のような感染拡大の可能性は極めて高い」ということが挙げられます。
ここでは特に最初の経済の今後の見通しについて述べたいと思います。
従来、政府の感染拡大に伴う経済対策は、V字回復型を想定していました。それはどういう意味かといえば、ヒトとモノが自粛やロックダウンにより一時的に停止してしまうが、6月までには元の状況に戻り、経済活動も100%回復する。そして3,4月の落ち込みをカバーするようなロケットスタートを促す刺激策をうつことで、経済は成長軌道に早いタイミングで乗ることができる、というシナリオを皆描いていたということです。そこにおいて必要なのは、雇用と企業をヒトとモノが止まっている2~3か月間は徹底的に守り、真に困っている方への支援と医療支援を行うということでした。
しかし、今の状況で実態としてどうなっているか。ヒトとモノが完全に止まっている状態は脱しつつありますが、再開後すぐに100%に経済が回復するという当初の想定とは全く異なった状況にあるというのが今の現実です。
まず、輸出。とある業界において予想されているのは、グローバルの売り上げが米中貿易対立で世界経済が落ち込む前の2018年レベルを回復するのは2025年、というものです。北米やヨーロッパなどの先進国、ブラジルやインドなどの新興国、あるいは中国。こうした世界の消費地の感染が完全に収束する時期を見通せる状況に全くなっていません。その状況にあっては、この予測はかなり蓋然性が高い。
そして輸出が完全に回復する見通しがなければ、企業の設備投資の回復を見込むことはできません。そのような生産拡大や新規投資のリスクを、秋以降の本格的な第二派のリスクもある中でとる決断をできる企業経営者はあまりいないと考えるのが自然です。
加えて、個人消費。個人消費が以前の状況に100%戻ることは正直考えられない状況です。少なくとも消費のスタイルが全部ではないにしても急激に変化することは確実です。またインバウンドが3000万人を超えるような平時に戻るのはワクチン開発以降と考えざるを得ません。そのような変化の時期に、従来の消費マーケットを取りに行くのではなく、新しい消費マーケットを作りだし、時代の変化を先取りし自らも柔軟に変化できる、供給サイドのしなやかさが求められます。そこに適応できない企業は今後厳しい時代を迎える可能性が高い。
このような要素を考えただけでも、これからの経済状況の深刻さが理解いただけると思います。5%のマイナス成長で大不況というのがこれまでの感覚です。4-5月は戦後最悪のマイナスを各国で記録していますが、これから年末にかけて、4-5月に比べればましな状況になると思われますが、一方で、一時停止ではない真の不況がやってくる可能性は極めて高い。そして、それがいつ始まりいつまで続くのか、感染の終息やワクチンや薬の開発など、今の段階では読めないというのが正直なところです。
今後、こうした構造変化を見据えた雇用調整や、自主廃業、倒産などが増加すれば、雇用への影響が出る可能性は高い。リーマンショックの時は、失業のピークはリーマンブラザーズ破綻から日本で10か月後、アメリカで14か月後でした。今の状況はリーマンショックで言えばリーマンブラザーズが破綻した日の途中という状況といってもいい。
そして今後、インバウンドやサービスなどを中心とした厳しい産業において倒産が増えれば、金融不安の引き金を引くことになりかねません。
我々が今すべきことは、こうした今後の長期的になりうる経済不況をなるべく小さく済ませるための対策であり、また同時に需要などの環境変化に対応できる経済構造の変革を促す政策です。それを総需要が長期的に減るという環境の中で行わねばなりません。そして数年かかる需要の変化を公需で全て埋めることは机上の理屈としてはあり得ても、実際の経済の流れや長期的な経済成長、国際競争力、マーケットや経済の現実を考えれば現実的ではありません。
政府与党として、実態を冷静に見極め、その場しのぎでない真に責任ある政策の実行を機動的に行っていくことが求められます。
編集部より:この記事は、外務副大臣、衆議院議員の鈴木馨祐氏(神奈川7区)のブログ2020年6月18日の投稿を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「政治家 鈴木けいすけの国政日々雑感」をご覧ください。