モノ言うアクティビストファンドとして有名なオアシス・マネジメントの株主提案に対して、三菱倉庫は一部譲歩されたそうです(ブルームバーグニュースはこちら)。同ファンドのキャンペーンHPを読んでいて「なるほど、ガバナンスの勉強になるなぁ」と思っておりましたが、やはりISSやグラスルイスが株主提案に一部賛同していたようで、これを受けて三菱倉庫としても要求に一部応じることになったものと思われます。
先日の前田道路、前田建設の垂直型協働の有効性についても、オアシスは早い時期から目をつけていて「目利き力が鋭い」と感じましたが、オアシスは(海外ファンドとしては珍しく)いよいよ東京に拠点を構え、アナリストも新たに採用しておられるので、同ファンドが株を保有している会社さんは、今からガバナンス対応に留意しておいたほうがよさそうですね(以下本題です)。
さて、本日(6月18日)私が社外取締役を務める会社の定時株主総会のリハーサルが行われまして、今年は社外取締役全員がリモートで出席する予定です。ということで、リハーサルではありますが、会社のバッチを胸につけて、当職事務所から参加いたしました。
社外役員にとって、総会リハーサルに出席する意味ってあるのかな?とも思っておりましたが、実際リハーサルをやってみたところ、バーチャル株主総会も含め、ふだんとはかなり様相の異なる総会を開催するのであれば、社外役員も総会リハには参加されることをお勧めいたします。
会場の様子がわからないというのはなんとも不安です。たとえば株主の質問に対して、議長がハキハキと回答している場面はよいのですが、舞台後方の事務局や総会指導の弁護士の方とヒソヒソ話をする場面がありますよね。あれって、リモート出席者にはどんな場面が展開されているのかわかりません。ひょっとして議事が進行しているにもかかわらず、自分だけ音声が届かなくなったのかな・・・と極度の不安に陥ります。
総会開催時に、リモート出席者は会場の株主から見えるのか、それとも発言時以外は見えないのか。決議が承認された際、入退場の際にお辞儀をしますが、リモート出席者はどうすればよいのか。今回は発言時以外はリモート出席者は顔を見せない、ということになったのでお辞儀をする必要もないのですが、会場の出席株主およびインターネット動画を聴取される株主の方々には違和感はないのか(会場から社外役員への質問も、なんとなくやりにくいような気がします)。
総会当日はリアルで出席する予定の社内取締役が、リハーサルではリモートで出席し、株主への質問に回答していたところ、途中で画像が固まり、音声も途切れるということがありました。当日、社外役員にも同様の事態が起きることも考えられます。ということで、私は総会当日、リモート装置が機能しない場合には、すぐに携帯電話で会場の音声につなげる体制をとることになりました。
あまり内情を暴露するのはよくないのですが(笑)、質問に回答する際には、演題下の小さなモニターに「想定問答」が映し出されるのです。ごく短時間に、関連質問を探し出して、その回答を映し出す総会担当者のスキルはたいしたものです。ところがリモート出席だとたぶん総会担当者のスキルでは間に合わない。私はいつも「出たとこ勝負」で回答しておりますので、とくに問題ないのですが、不安に感じる役員の方もいらっしゃるかもしれません。
昨年は株主質問が合計9件、うち社外役員である私を指名しての質問が1件ありましたが、「あなたはブログで『6月総会は完全延期すべきだ』とおっしゃっていたのに、どうして当社は例年どおりに6月総会を断行したのか」などといったイジワルな質問が来ないことを祈ります。「株主質問はできるだけお控えいただき、しんみりとリモートにて会議に出席している心中を察していただくことを推奨いたします」と申し上げたい気分です( ゚Д゚) 後日発行されます「統合報告書」にて、私のインタビュー記事が掲載されますので、株主の皆様にはそちらをご参照いただければ、と。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年6月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。