スペイン国内では、6月18日付の紙面の大半が、新型コロナウイルス感染による死者は、2万7000人を超えた死者数が報道されている。ところが、実際にはそれよりも1万3000人多いのが実際の死者数だ。すなわち、死者数は4万人を超えているということだ。
どこの国でも累計から出される数字には大いに疑問の余地ある。今回のコロナ感染における累計上の問題は17の自治州の感染者そして死者と認定する基準が州ごとに異なっていたというところにある。よって、各州から報告を受けた累計数字を政府が集計して国としての累計を出すが政府が規定した基準に従って各州が累計していなかったということなのである。
今日の政府による累計では死者数は2万7136人となっている。ところが、この死者数にはカタルーニャ州政府が後日修正した死者数3824人が加算されていない。さらに、マドリード州政府が後日認めた老人ホームや自宅で死亡した4801人も含まれていない。この2つの自治州以外に他の15の自治州及2つの自治都市でも同様に死者数で公式発表と実際の数には差異がある。(参照:okdiario.com;elconfidencial.com)
根本的な問題は、感染しているか否かのPCRテストを受けていない死者はこの累計に含まれないと政府が当初規定したことである。例えば、心臓又は肺に疾患がある患者が、のどの痛みや発熱で入院して死亡しても事前にPCRテストで陽性とされていなければ、その患者がコロナウイルス感染による死者とは認定されないとしたのである。
さらに、各自治州でも基準が異なっており、カタルーニャ州の場合は病院でコロナウイルスに感染した死者は認めても、老人ホームや自宅で死亡した場合はコロナ感染による死者と認めなかったのである。
それを政府は今も訂正していないのである。だから、政府が発表するコロナウイルス感染による死者数は正確ではないと言えるのだ。
政府の統計を敢えて無視して正確な死者数を掲載して来たメディアの一つが、電子紙『OKDIARIO』である。同紙は18日付では4万372人を死者数の累計だと報じている。
今回のコロナウイルス感染による最大の犠牲者は老人ホームで生活していた高齢者だ。死者の半数以上が老人ホームで生活していた高齢者だ。スペイン代表紙『El País』は今日付でマドリード州のパッラ市の病院で医療スタッフのチーフが病気持ちの高齢者は臨床から外すようにと指示しているビデオが明るみにされた。(参照:elpais.com;elpais.com)
また、老人ホームで死亡していながら報告されていなかった高齢者もいたということが軍部による1353回の老人ホームへの調査で判明している。これも政府の累計に加えてられていない。(参照:elespanol.com)
ということから、検察庁は全国38か所の老人ホームの事情調査に入ったが、その内訳はマドリード州では19か所の老人ホームを調査した。それ以外の自治州ではカタルーニャ(7か所)、カスティーリャ・ラ・マンチャ(5)、カスティーリャ・イ・レオン(2)、ムルシア(2)、バレンシア(1)、カナリア諸島(1)、カンタブリア(1)という内訳である。(参照:publico.es)
ちなみに、スペインには37万2985人の高齢者を収容できる老人ホームが全国に5417か所あるとされている。その大半は民間企業が経営している。(参照:elespanol.com)
老人ホームで最も杜撰な例として英国の投資会社ドムスビー(DomusVi)が経営している老人ホームがある。スペインで6つの自治州に10か所の老人ホームを経営している。この10か所の老人ホームで154人の高齢者がコロナ感染で死亡していたということが明らかにされたのである。
その内訳をドムスビーが所在している都市ごとに見ると、セビーリャ(8人)、バヤドリード(32)、バルセロナ(2)、アリカンテ(40)、サンティアゴ・デ・コンポステラ(14)、ビゴ(16)、ポンテベドゥラ(16)、バルデモロ(20)、バルマセダ(6)となっている。
ドムスビーの広報担当は彼らの老人ホームで死亡した高齢者について州政府に隠ぺいしたのではないと発表している。しかし、死者数については一部しか報告していなかったということが判明している。(参照:infolibre.es)
以上のことから、前述したように18日の時点で死者数は今も訂正されず1万3000人余りが政府の死者累計に加えられていないのだ。政府は累計に加えるか否か検証している段階だと言って訂正していないことを弁解している。
スペインは10年後には高齢者の数では日本を追い越して世界でナンバーワンの長寿国になると予測されている。今後の老人ホームの衛生管理がより必要だとされている。