皆さんが一人1つ持っているマイナンバー、これに金融機関の口座を紐づける議論が進んでいます。
今月9日に高市早苗総務大臣が、政府から給付金などを受け取る際に使用する金融機関の口座をマイナンバーとセットで登録することを義務付ける方針を打ち出して、来年の通常国会で法案の提出を目指すということです。
さて、なぜ今この議論が出ているのか、それは新型コロナウイルス対策として国が支給する特別定額給付金(一律10万円給付)の支給決定と関係しています。
皆さんはもう10万円給付を受け取りましたか?
といっても申請しなければ受け取れませんから申請をしていない人には永遠に受け取れません。
給付状況は、6月12日の段階で世帯全体の給付率は43.7%、給付総額は約5兆9,600億円(5,960万人分)で予算総額の46.8%相当が給付済みです。
その手続きですが、先程も言ったように申請しなければいけなません。希望者は書類を郵送し、市役所では郵送された書類に間違いや不明点がないか確認しなければいけません。一つ一つの申請書類を手に取って、市役所職員が自分の目で確認する膨大な作業をしているわけです。マイナンバーカードを持っている人は、オンラインで申請できますが基本的には記入事項などは郵送と変わりません。唯一の違いは、運転免許証などの本人確認書類がなくてもいいということのみです。
要するに郵送でもオンラインでも自分の住所、名前から始まって、どこの金融機関のどの口座に振り込むのかということを記入して申請しなければいけません。ですから、10万円給付が決まった第1次補正予算の成立(4月30日)からすでに53日も経っていますが、まだ全希望者への給付が完了していません。
これに対してアメリカでは給付金を国民に2週間で振り込んでるんですけれども、これには社会保障番号というのを使っています。社会保障番号に銀行などの口座が紐付けられているから、すぐに振り込めたわけですね。これをプッシュ型と呼んだりしますが、要は言われなくても振り込むということです。
そもそも平成28年にマイナンバー制度をスタートさせた段階で、なぜそういうことをしなかったのかというと、国に銀行口座を知られたくないという国民意識と、最たる個人情報じゃないかと論陣を張るメディアの存在があったからです。これは私の推測ですけれどもお金を持ってる人ほど銀行口座を知られたくないという心理があるのではないかと思います。
ただ産経新聞とFNNの実施した世論調査によると、紐付けの義務づけに賛成は33.9%、反対が55.2%ですから紐付けに反対する人のほうががまだ多いですね。
我が国で銀行、信用金庫、郵便貯金などの個人口座数どのくらいあるかというと、全体では11億を超えていますということですよ。ですから、1人当たり10口座近く持ってるってことになります。実はこれ世界で見たらダントツに多い数字です。みんながみんな、持っているお金をいくつかの金融機関に分散させてるというわけではなく、例えば会社の近くや自宅近くなどの利便性で使い分けをしているのだとは思います。
せっかく作ったマイナンバー12桁で、その人の個人情報が丸裸になってしまうことは駄目だと思いますし、高市総務大臣も、「口座の内容を把握するのではなく、あくまでも、どこどこの銀行の、何してんさんに誰々さんの口座がありますよといった情報をマイナンバー引き出せるように」と理解を求めていました。
せめて、災害時などのこういった給付金の受給などに使っていくために、一つぐらいは紐づけてもいいんじゃないかなと私は思いますが、皆さんはどう思いますか。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年6月23日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。