今週は26日まで株主総会関連で忙しく、ブログネタを考えている時間がとれません。ということで、固い法律の話ではなく、あまり報じられていない株主総会関連のとれたて(?)情報をご提供したいと思います。
ひとつは7月末に延期されました東芝の株主総会ですが、「物言う株主」で有名なエフィッシモ・キャピタル・マネジメントが3名の取締役選任議案を株主提案として出しました。ちなみに会社側は、当該候補者の就任について反対意見を述べています(サンケイビジネスアイより)。記事には掲載されていませんが、東芝の開示情報から株主側取締役候補者の名前を拝見して「おお!」と驚きました。私の存じ上げる竹内朗弁護士と経営法友会の前代表幹事(花王の前執行役員)の杉山忠昭さん。竹内さんは仕事もご一緒しますし、杉山さんには花王時代にお世話になりました。
エフィッシモといえば、常に「旧村上ファンド系」とメディアで紹介されますが、ここのところ中長期的な企業価値向上のための施策を要求することが多いように思います。委任状争奪戦になるのかどうか、今後の展開はわかりませんが、エフィッシモの人選は至極まともなものだと思いました。「今年の総会は6月で終わらない、終わらせるわけにはいかない」という雰囲気です。
ふたつめは「富岳」のスーパーコンピューターで湧く富士通ですが、6月22日の株主総会で、15年間社外監査役をお務めになった元裁判官の方(弁護士)が、再選されたうえに、このたび「常勤監査役」に就任されたそうです(他の会社の社外役員も、この6月総会で退任されたそうです)。非常勤社外監査役から常勤監査役、監査役会議長に就任される、というのは珍しいですね。
15年間も日本を代表する企業の社外役員を務める・・・というのも「就任期間が長くなりすぎて独立性に問題があるのでは」との声も聞こえてきそうです。ただ、この常勤監査役の方は、2012年のこちらのエントリーでもご紹介しておりますとおり、「富士通元社長が、反社との交友が疑われたため、退任を要求された」事件において、元社長に直接退任を通告した方です。オウム真理教裁判では有名な判決を下し、また「裁判官というお仕事」を「マツコの知らない世界」でマツコさんに解説されていました。「独立役員」からは外れましたが、今でもガバナンスの要なのかもしれません。
最後に(これは少しだけニュースになっていましたが)伊藤忠商事の株主総会では「数人の株主が出席するという『ハプニング』が発生した」(6月20日産経新聞朝刊)そうです。5月18日のエントリー「伊藤忠商事の定時株主-出席自粛要請・役員のみ開催-総会に関する素朴な疑問」において、「役員のみで開催します」という総会はおかしいのではないか、と意見を述べましたが、ホントに一般株主の方々がお越しになったのですね( ゚Д゚)。。
どのような株主の方々がお越しになったのか不明でありますが、会社側はどうされたのでしょうか?「お越しになったのなら、やむをえない。どうかご入場ください」となったのでしょうか。昨日(6月22日)に公表された伊藤忠商事の臨時報告書を読みますと、「議決権の数に株主総会に出席した議決権の数の一部を加算しなかった理由」として「本総会当日に出席した株主のうち、賛成、反対、棄権の確認ができていない議決権数は加算しておりません」とありますので、たしかに一般株主の方々が当日出席されているみたいです(役員であり株主でもある方は、間違いなく前日までに行使しているはず)。
しかし、あのリリースの表現はどうみても「株主出席は一切禁止」と読めるので、株主への公平な取り扱いを重視するのであれば出席はご遠慮願うのは筋のような気も致しますが。それとも、どなたかコメントされていたように「一切禁止とは言っていない。来ないことを推奨しているにすぎない」といったことだったのでしょうか。法的に考えるといろいろと疑問も生じますが、本日は固いことは抜きにして。
編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2020年6月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。