アフターコロナになっても、リモートワーク、テレワークは定着しそうですね。
アメリカのTwitter社は永久にテレワークを認める方針ですし、中チャンが配信されているニコニコ動画を提供しているカドカワdwango社は、約1,000人の従業員全員を基本的に収束後も在宅勤務を継続する方針を発表しました。
上記のいずれの会社もいわゆるIT企業で、これらの仕事は家でもやりやすいというふうに分類できると思います。確かに、業種としての違いはあって、どうしても現場に行かなければならない仕事もあります。しかし、全社員が現場で働いているわけではありません。例えば建設業や百貨店など、現場にいる社員さんもいるけれども総務部門や経理部門の社員さんもいます。そうした部署ではリモートワークが可能かもしれません。アメリカの銀行最大手JPモルガン・チェースではリモートが可能な職員は、在宅勤務にする方針を打ち出しています。
これから先、リモートワークやテレワークが定着していけば、オフィスが不要になり、払ってきた賃料がなくなり、経営コストが下がります。他社と比較をして、経営資源を有効に活用して競争力が高まるということにもつながります。
また、これIT企業の話ですけれども、大手のGMOグループの熊谷正寿代表はツイッターで、「在宅勤務開始から3週間。何が凄いかと言うと、業績に影響がほぼ無い。この結果を見て、そもそもオフィスが必要なのか真剣に考えている」と2月16日につぶやきました。いち早く全社でテレワークを実施してから3週間、業績が落ちなかったからです。大手だけではなくて、むしろ中小の方が動きが早いと思います。私の知る中規模のIT企業ですが、オフィスを半分にする決断を下して半分契約をやめました。私が本当によく知る経営者で、彼も「業績に影響がなかった」とやはり言っています。
そうなると今後、オフィスが余ってくるかもしれません。その兆候ともいえるデータがあります。東京都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスビルの空室率(空室数を全体の部屋数で割ったもので、空室が増えると空室率が上昇する)は、5月に3ヶ月連続で上昇し既存ビルの賃料が下落しました。既存ビルには面白い現象が出ています。5区全体では1.64%の空室率でしたが、IT企業が多い渋谷区は2.55%になっています。他の4区が1%台ですから、渋谷区がダントツで高いんです。
実はそもそも東京都心の3月のオフィス空室率は0.6%で、これ93年の調査開始以来で最も低い、すなわち3月の段階ではほとんど空きがない状態でした。そんな状況から考えると、今後は新たなオフィスビルもまだまだ供給されてくるなかで、リモートワークやテレワークが定着するということになると、空室率が上がり賃料が下がる傾向は一層強まるかもしれません。
SMBC日興証券が大手企業81社にアンケート調査をしたところ、テレワークを増やすという回答が78%もありました。これに対して、オフィス面積を減らすという回答は7%、変わらずが53%だったんですね。テレワークが増えてもオフィス面積が変わらずというのは先ほど私が言ったこととは逆のようですが、私はそれもありえると思います。なぜならば、ソーシャルディスタンスを取ってオフィス人口の密度を下げるということが考えられるからです。例えば半分の人はテレワーク、半分の人は出社できるようにすると、1人あたりの使用面積が倍になることで、オフィス面積が変わらないことも考えられます。そうなると、よりゆったり快適なオフィスになるのかもしれませんね。
国も動き始めました。国土交通省は今回の新型コロナウイルスで特に都市の過密という課題が顕在化し、ワークスタイルやライフスタイルの価値観が変化したとみており、今年の夏にもまち作りの論点として取りまとめて、来年度予算に盛り込もうと考えています。例えば自宅に近いところでテレワークができるシェアオフィスや、自宅近くで運動ができるスペースとしての公園など、自宅を拠点に仕事をする時代のまちづくりということでもあります。新型コロナで働き方が変わり、オフィスの需給が変わり、まちづくりも変わっていくということです。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年6月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。