Society5.0という言葉をよく聞くようになった。
狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続くサイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)のことを言うらしい。
そうすると、おそらくSociety6.0は、人間中心から、動物、植物も含めた調和や尊厳が重視されるのではないだろうか。
そんなことを考えたのは、ベストセラー「樹木たちの知られざる生活」(ペーター・ヴォールレーベン著・ハヤカワノンフィクション文庫)を読んだから。
ドイツの森林管理官である著者が、長年の観察に基づいて書いた本。
周りの木を間伐すると、一部の樹木だけがどんどん光合成ができるようになり、糖分を蓄え、よく生長するが、長生きすることはないという。
なぜなら一本の木の寿命はそれが立つ森の状態に左右されるからだという。木々がまばらになると、森に日光と風が直接入り込み、湿った冷たい空気が失われ、どんな巨木でも害虫がついただけで死んでしまうという。
そうならないために、自然の森では、根を通じて強い木が弱い木に栄養を分け与えているという!実際、密集しているブナ林の方が間伐したものより明らかに生産性(資源量の年間増加率)が高いという。
葉、枝、幹、根、土、菌、虫、鳥、光、風、水…
森をあらゆる角度から描く、森への愛情が貫かれている。
街路樹をストリートチルドレンと捉える感性も瑞々しい。
一方、林業としての採算性や継続性はどうなっているのかについては本文では触れられていないだけに、そのあたりが気になりました。
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2020年6月28日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。