7月1日は香港がイギリスから返還されて23年目の記念日なんですが、暗黒の記念日になりました。
というのも、中国の立法府にあたる全国人民代表大会(全人代)で、香港での反政府的な動きを取り締まる「香港国家安全維持法」を可決、香港政府は6月30日に即日交付・施行され、香港に新たに「国家安全維持公署」という治安機関が香港に設置されました。これらを簡単に言えば、香港のことは香港の人が決めるというこれまでの香港が、より明確に中国の一部になるということです。
この香港国家安全維持法では、国家の安全に危害を加える犯罪行為として「国の分裂」「政権の転覆」「テロ活動」「外国の勢力と結託して、国家の安全に危害を加える行為」の4種類を禁止しました。一見、日本でも当然のように見える言葉ですけれども、香港はこれまで自由や人権が幅広く認められ、資本主義でした。今後は中国政府に盾突いたり、批判することすら危うくなり、自由な発言や運動が取り締まられることになります。
これまでは香港の取り締まりは香港警察でしたけれども、これから先は国家安全維持公署が取締りにあたり、外国勢力が介入する複雑な事案などでは管轄権を行使し、中国本土の法律に基づいて捜査や起訴、裁判が行われる。最高刑は無期懲役で、香港政府が法律を適用する際は終身刑となります。これによって、これまで香港にあった自由や一定の民主主義、人権などが大きく後退をし、中国化するということになります。すでに民主派の活動団体が解散をしたり、香港独立の主張をしている団体が香港から、海外に活動拠点を移すと発表しています。また多くの香港人がこれからの香港に不安を強めもう移住した人もいますし、これからの移住を考えている人もいます。
もともと香港を統治していたイギリスは、これまで6ヶ月だった香港市民のイギリスでのビザなし滞在を延長し、やがての永住に道を開いていく方針です。
また、台湾も香港からの移民を積極的に受け入れを表明しています。台湾にとっては深刻な問題でしょう。というのも、香港が中国に返還された後のこれまでの一国二制度は、そもそも台湾をにらんだものだったからです。
英中が1997年7月1日から2047年までの50年間、中国は香港を社会主義化しない「一国二制度」を守ることを条件に香港返還で合意し、中英連合声明が発表されました。香港返還について、イギリスの首相マーガレットサッチャーと協議した当時の中国のトップ、鄧小平は自由がある経済とし、この維持を考えて一国二制度を打ち出したんですね。そうすることで、経済発展がまだまだだった当時の中国が、香港を特区的に位置づけて、日本をはじめとして諸外国と付き合うその出入り口として位置付けたからです。さらに、今も昔も変わらず中国国内には人権や自由がありません。今回こうして一国二制度が事実上崩壊するということは、中国経済は発展してきたからもう香港はいらないということでもあるでしょう。鄧小平は、50年は変えないと言ってきた一国二制度、50年どころか半分にも満たない23年で大きく変わることになります。
一国二制度がヨーロッパ、アメリカ、日本などの自由民主主義国は、国際約束の違反だと抗議をし、また制裁措置を打ち出している国もあります。
はっきり言いましょう。
私は香港が死んだと見えます。
そうなると次は台湾です。
沖縄、そして石垣島から目と鼻の先の台湾から民主主義がなくなれば、軍事的にも、劣勢の日本は厳しいですね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。