エジプト軍閥の“子飼い”小池百合子の運命③ エジプトへの個人的な見返り、日本人の血税300億円(特別寄稿)

浅川 芳裕

小池氏とエジプト・シシ大統領。この会談で大統領は小池氏に礼を述べるが、その理由とは…?! (出典 shorturl.at/enwJX

前回(「私は100%エジプト人なの」)取り上げた「カイロ大学、小池都知事のために都知事選に‟点火”」(ニュースサイト「アルバラド」)などの一連の記事に関し、SNS上ではこんな書き込みがあった。

東京都知事! 誰とやりとりしているんですか?

この証言(カイロ大学声明)は怪しい。エジプト政府の声明だから、疑念をもって当然だ

(この記事は)偽りを語っている。それは、神のためではなく、自分自身の満足、そして腐敗した支配者のためだけに

さすがは独裁専制下で生きてきたエジプトやアラブ諸国のネットユーザーたちだ。小池氏の学歴騒動の深層について、お見通しである。小池氏とエジプト政府間の癒着や腐敗、それを覆い隠すエジプト政府のプロパンガンダを見透かしているのだ。

エジプト流プロパガンダの真髄を見せた動画

そんな小池記事への書き込みが盛り上がった数日後、元記事を掲載したニュースサイト「アルバラド」に妙な動画がアップされた。

「サダム・フセインと東京都知事 ―カイロ大学の卒業生たち」と題するものだ。いわずと知れたフセイン元イラク大統領と小池百合子東京都知事のことである。

これがエジプト流プロパガンダの神髄である。いくら疑念や疑問が寄せられても、一切答えず、さらに大きな“誇張“や”法螺“をかぶせていく。それを何層にも重ねることで、疑念を持つ者の追求心をそぎ、真相を闇に葬り去る。すべてはエジプト国家に有利な言論空間を生み出していくためだ(参考文献:小池氏を子飼いにしたハーテム著『プロパガンダ:理論と実践』未邦訳)。

プロパガンダの各層を丹念にみていけば一見、脈略がなさそうでも重要なメッセージが込められていることがある。では、この動画に何の意味があるのか。タイトルにある「サダム・フセインと東京都知事」―――2人の共通点は何か。

小池氏とフセイン元大統領の共通点

2人は奇しくも、カイロ大学での学歴について真偽が取り沙汰されてきたという共通点がある。さらに、2人とも要人になった途端、エジプト軍閥がカイロ大学の偉大な卒業生として公式に発表し、賞賛されるようになった人物という稀にみるもう一つの共通点がある。

小池氏とフセイン元大統領(官邸HP、Wikipedia)

(ちなみに、フセインはカイロ大学中退説が根強かったが、後年、本人の自伝で法学部2年中退と認めている。その点、小池氏とちがい、正直で潔い。しかし、エジプトは本人が中退と認めていても、自国にとって有利だとみなせば、勝手に卒業公認をする国柄である。小池氏の場合は、フライングして卒業自認(学歴詐称)してしまうが、後に超法規的に公認されるという変則ケース)。

実は2人にはもう1つの共通点がある。カイロ大学の外国人特別待遇枠である。

カイロ大学では1954年の粛清後、小池氏が留学する70年代まで、特殊な外人留学枠が存在していた。1つはアラブ諸国で反政府活動をする若者を亡命させ、ナセルの「アラブの大義」で洗脳し、国に戻ったとき工作員にする枠。サダム・フセインもその1人だった。

もう1つは表向き文化的だが、同様にエジプトの国策に都合のいい将来のエージェント育成のため、非アラブ特定国の若者を優遇する枠。ハーテム氏は情報相のトップとして、アジアやヨーロッパ諸国の若者受け入れを推進すると同時に、それらの国々の議員と友好協会を立ち上げていった。

ハーテムは同協会会長としての功績として、以前とりあげたとおり、2つ功績をあげる。1つ目は「数百億円にのぼる巨額の援助を日本政府から引き出したこと」、そして2つ目は「小池百合子を『子飼い』にしたこと」である(アハラーム紙2004年6月21日)

エジプト軍閥の子飼いになってから40数年後、ハーテムの後継者として、小池氏は最大の栄誉の瞬間を迎えることになる。

シシ大統領は小池百合子元防衛相(1976年カイロ大学文学部アラビア語学科卒)が率いる日本エジプト友好議員連盟会長と面会し、謝意を表した。彼女がエジプトとの関係発展に注意を払い、両国関係を有利に進めている事柄に対してである。(2016年3月4日アハラーム紙)

小池氏は、エジプト軍閥の統領からよくやっていると褒められたのだ。何を褒められたのか。

小池氏が300億ODAの発端を示す証拠

同じ記事のなかで、「エルシシ大統領の日本訪問では、教育プログラムに関連して多くの目標を達成した」とある。

教育関連で一つはっきりしている2カ国間案件がある。3百数十億円にのぼるエジプトへの日本のODA(政府開発援助)による教育支援策「エジプト‐日本教育パートナーシップ(EJEP)」で、シシ大統領から小池氏が謝辞を受けた1カ月前に発表されたものだ。

その1年前、小池とシシ両氏のエジプト大統領府における会談内容をみれば、エジプトへの教育支援ODAへの小池氏の具体的な関与が明らかになる。

シシ大統領は小池氏のエジプトへの支援を賞賛」したうえで、「教育分野において日本の経験から利益を得ることについて、エジプトの関心を表明した。(「アルマスダル紙」ネット版2015年5月3日)

シシの関心に対し、「小池氏はエジプトと日本の関係を強化する努力を惜しまない」(同上)と後押しを表明。

さらに、小池氏は「私がエジプトを大切に思っているのは、公式のレベルだけでなく、個人のレベルのことである」と語っている(同)

つまり、小池氏こそがエジプトに対する300億超の教育支援ODAの発端であり、窓口だという会談内容である。加えて、この教育事業は個人レベルの話だとの意味深な発言も含まれる。

本人発表でも、「小池議員も大統領の認識に賛同し、日本の優れた初等教育の方面からの協力が効果的であり、喜んで協力する準備があるとの発言を行った」(小池百合子衆議院事務局のプレスリリース2015年5月4日)と認めている。

「エジプト‐日本教育パートナーシップ」には2つの事業がある。ひとつは、「エジプト・日本学校(小中学校)支援プログラム」(総額186億2,600万円、エジプト大使館文化・教育・科学局発表)で、小池氏が言い出した“初等教育の方面からの協力”そのものである。

100億円を見返りにした“美しい対応”とは?

もう一つが「エジプト人留学生・研修生」受け入れ事業で、総額101億9,200万円(同)である。

これが、先の小池発言「個人レベルのエジプトへの思い」にもとづく事業のことである。先ほど引用したアハラーム紙記事の記者が種明かしする。長文記事の最後に「小池の経験とエジプトへの美しい対応」と題するコラムを寄せている。

以前、小池氏に取材した際、こう語っていた。故ナセル大統領が外国人学生に対し、奨学金を提供するという重要な政策を採用していたと指摘し、彼女自身もエジプト政府から月額8エジプト・ポンドの助成金を受け取っていた。

ナセルの行った投資は有益で成功だったでしょ。だって、そうじゃない!

小池氏は今日、日本政府のエジプトの学生に対する広範囲な奨学金プログラムについて、強力な支援者である。

記者は「美しい対応」と題しいかにも美談のように語るが、まったくちがう。小池氏が自分のエジプトからの借りを今回、100億円にして返しましたよという下品な話だ。問題は、言うまでもなく日本人の税金を使い、ODAの形でエジプトへ見返りを続けている点である。

小池氏は、ハーテム博士に対して、エジプトやエジプトの友人のために奉仕するプロジェクトを話題にした。(アハラーム2011年9月3日付)

連載1回目で引用した発言のとおりだ。軍閥から弱みを握られた小池氏のエジプトへの見返りについて、今回、現地メディア(軍閥・情報部の従属下にある政治機関)にもとづき明らかにできたのは氷山の一角である。

ただ確実に言えるのは、都知事としての公約実現はゼロだが、エジプトへの公約(見返り)は長年、果たしているということである。小池氏は彼らに生殺与奪を握られているのだ。