コロナ対策を名目に、この東京都知事選で現職の小池百合子氏は、オンラインを主体にした“ステイホーム選挙”を続けてきたが、選挙戦終盤になり、公務を名目にしたリアル活動に力を入れはじめた。
1日には公務スケジュールを前日に変更し、都営アパートの視察を名目に元秘書が出馬した都議補選真っ最中の北区へ。そこで都の職員が立ち合っていない“空白”の時間があったことは本サイト既報通り。
そして投票日を2日後に控えた3日、今度は豊島区が主催した「緊急池袋繁華街 新型コロナウイルス感染防止大会」に来賓として参加。多忙の中を1時間余り冒頭から最後まで居続ける熱の入れようだった。
池袋は新宿と並び、繁華街での新規感染者の急増がクローズアップされている。この日は観光協会やホテル旅館組合、飲食業組合、防犯協会、商店会などの業界団体の責任者が約20人も集結した。
来賓あいさつにたった小池氏は、都知事としてコロナ対策の取り組みを語ったが、池袋は、衆議院議員時代のホームグラウンド。気心を許したためか、「池袋に育ててもらった」などと“選挙モード”の語り口になる一幕もあった。
また、団体の感染対策の取り組み説明の際には、豊島区の高野之夫区長が「知事への要望があればどうぞ」と陳情を促すように仕向ければ、観光協会名誉会長が「大変お忙しい中、ありがとうございます。選挙運動もできないんだろうな…」と気遣って場内が苦笑いに包まれるシーンも。
まるでコロナ対策の決起に合わせて、小池氏再選に向けた“地元激励会”も兼ねた様相。場内で上映された、街中の団結を呼びかけるプロモーションビデオが、知事選への結束を彷彿させるほどだった。
一方で、感染拡大防止が目的なのに、会場のとしま区民センター多目的ホールには関係者、報道陣も含めて200人はくだらない大人数が集結。ソーシャルディスタンスは取られず、入口の扉を開けて3密のうち密閉だけはかろうじて逃れた会場設営だった。大会の招待状をもらった地元関係者の中には「なぜこの時期にあえて密を作り出すのか。わざわざ都知事まで参加するのか疑問だらけ」と呆れ気味の声もあった。
これにはさすがに高野区長もバツが悪かったようで、会合前に挨拶を交わした出席者との雑談から「人を集めないと大事なことは伝えられないし、かといって人を集めるのもね…」と本音を語るのが漏れ聞こえてきた。
「公務」の名目で、豊島区の名士たちを集めてのイベント。高野区長が小池知事に肩入れするのもそのはず。筋金入りの「親小池派」として有名だ。前回の都知事選の際も、23区区長の大半が、自民・公明推薦の候補者を推した中で「崖から飛び降りた」無所属の小池氏を応援した。
知事、区長が首長として公的なイベントに登場するとなれば、報道陣は取り上げざるを得ず、投票日直前にダメ押しとなるメディア露出も見込める。PR巧者の小池氏と、強力な地盤をフル回転させた高野区長による見事な連携プレーだが、都知事選他陣営のある国会議員は「小池知事と高野区長が結託して公務に名を借りた選挙運動なのは明らか」と憤りを隠さない。
圧勝ともいわれていた小池知事だが、選挙戦終盤にきて、コロナの新規感染拡大に批判が増えるのを懸念したのか、“地元固め”に力を入れるあたり、なりふり構っていられない様子だ。最後の記者会見では、TBS系「報道特集」の金平茂紀キャスターに投票所の感染リスクを問い詰められると、面倒臭そうに早々と質疑を打ち切って会場を後にしていた。