人間の行動パターンは簡単には変わらない

日本経済新聞によれば、今年5月時点で、東京都内の人口は1400万人に到達したそうです(図表も同紙から)。2009年に1300万人を超えてからの11年間の人口増加の内訳を見ると、増加した97万人のうち72万人が都外からの人口流入になっています。

しかし、コロナショックにより、この流れが逆流を始めました。今年の1月から5月の5ヵ月間に外国人は、約1万4千人が都内から流出しました。昨年の同時期に、約1万3千人が人口流入していたのとは対照的な動きになっています。

また、日本人の東京都への人口流入数も、2020年4月は前年同月比で1万人減っています。さらに今年5月は転出の方が多くなり、東京の6月の人口は1400万人を再び切っています。

この傾向は継続的なものとなり、日本全体と同じように、東京も人口減少エリアになっていくのでしょうか。

私は今後は人口増加のペースは今までより鈍るものの、東京は再び人口増加に転じると考えています。

その理由の1つ目は仕事です。東京には、ビジネス拠点としての魅力が溢れており、単価の高い仕事も集中しています。企業がオフィスを地方に移転する動きが出たとしても、賃料の節約といったメリットがある反面、人材確保などにはマイナスの影響が出ると思います。リモートワークもある程度は普及するでしょうが、東京にいなければできない仕事、東京でやる方がメリットの大きな仕事も多いのです。

また、生活の利便性は圧倒的に東京が高くなります。公共交通網が発達し、24時間営業のコンビニや飲食店も数多く存在します。人との交流には、東京が圧倒的に便利なのです。特に単身者や高齢者には、東京から不便な郊外に転出するインセンティブは余り無いと思います。

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そして、3つ目の理由は、過去の経験則です。東日本大震災の後、原発のリスクを恐れ、東京から多くの外国人が逃げ出すように出て行きました。また、浦安のような湾岸エリアでは液状化現象が発生し、地盤の弱さを露呈しましたが、今では何もなかったかのように、人が住んでいます。

人間というのは、今までやってきた行動パターンを簡単には変えられないものなのです。

コロナショックによって人々の行動パターンには、変わることと、なかなか変わらないことがあると思います。都市への集積という今までの流れは、後者ではないかというのが私の見立てです。

しかし、これは飽くまで個人的な予想ですから、当たるとは限りません。今後この予想通りの展開になるのか、東京の人口動態をしっかりフォローしていくつもりです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。