男性医師 逆転有罪:さすがに、この高裁判決は首肯できない

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裁判所に提出されている証拠や関係者の供述内容などを子細に検討しないで裁判所の判決にあれこれケチを付けるような軽率なことはしたくないのだが、どうもこの判決は上告審で覆されてしまいそうな予感がしている。

少なくとも、合理的な疑いの余地がないほどに犯行事実が証明されている、とは言い難い事例のようである。

弁護人の手腕にも懸かっているのだろうが、この程度の証拠で有罪認定されてしまうのだとしたら、医療関係者はパニックになってしまうのではないかしら。

被害者とされている患者の証言の真実性を疑うのは、裁判官にとっても難しい仕事であることは一応認めるが、ご本人には嘘を言っているという認識はまったくなくとも事実とは違うことを真剣に訴えていることがある、というのは、法律実務家であれば大抵経験していることではないだろうか。

上告審は法律審で、事実認定について争いが出来るのは控訴審まで、という建て付けではあるが、経験則違反ということになれば、最高裁がこの判決を破棄差し戻すという可能性がないわけではない。

術後せん妄の事例は、多いようである。

弁護団の皆さんが、医療関係者から術後せん妄の事例を収集されたら、それこそ驚くほどの量になりそうだ。

SNSを通じて既に膨大な事例報告が流れてきている。
医療関係者だけに留まらず、一般の方々が、ご自分の身近で経験されてきたことを詳細に書いて報告されているのだから、これらの事例を整理して裁判所に提出したら、裁判所の方でもこれはちょっと早まったかな、ということになるのではないか。

検察も裁判所もそれぞれご自分たちの職務を誠実に執行されていることには疑いはないが、それでも時にはおかしな起訴やおかしな判決が出ることがある。

少なくとも一審で無罪になった判決を、懲役2年の実刑判決に引っ繰り返したこの高裁判決は疑った方がよさそうである。

事案の概要(引用元は、7月13日付け弁護士ドットコムの記事抜粋)

手術直後の女性患者にわいせつな行為をしたとして、準強制わいせつ罪に問われた男性医師の控訴審判決。東京高裁の朝山芳史裁判長(細田啓介裁判長代読)は7月13日、1審・東京地裁の無罪判決を破棄し、懲役2年を言い渡した。

判決後、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いた男性医師は「怒りと憤りを覚えています。やっていませんし、無罪です。公正であるべき裁判官が公正な判断をしないことに怒りを覚えている」と話した。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年7月14日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。