アメリカの二枚舌

日本時間の今月14日、アメリカのポンペオ国務長官が南シナ海をめぐる中国の主張を「南シナ海の大半の地域にまたがる中国の海洋権益に関する主張は完全に違法だ」と発言しました。

国務長官というのは他の国だったら、外務大臣に相当しますが、実は中国の主張を違法アメリカが言ったのは初めてのことなんです。中国は南シナ海で、ベトナムやフィリピン、インドネシア、マレーシアなどの島や海を自分なものだと聞いて、主張してきました。

マレーシア : ジェームズ礁・ルコニア礁
ベトナム  : バンガード堆
フィリピン : ミスチーフ礁・アユンギン礁   など

中国は九段線という線を勝手に他国の目の前まで引き、「九段線より内側は昔から中国のものだ」と主張してますが、はっきり言って真っ赤な嘘です。数年前まではそれぞれの国の漁民が漁業をしていた海なのに、最近では日本の海上保安庁に相当する中国の海警という銃弾を何発も持っていてほぼ軍隊とも言える船がやってきて、漁船を追い回したり体当たりしたりして、漁船が沈没するような事件も発生しています。

以前にもお伝えしましたが、2016年に国際仲裁裁判所がフィリピンの主張を認めて、中国が主権を主張する独自の境界線「九段線」に国際法上の根拠がないと認定しました。しかし、そうした都合の悪いことは中国は全部無視をし、「俺たちが俺たちのものだと言っているのだから間違いない」として、そうした島々を占拠して軍事施設を作ってしまいました。その上で実効支配を強めて武力で脅かすということをこれまでやってきました。これ嘘ではなく実際の話なので、皆さん調べればすぐわかりますよ。

こうした中国に対してポンペオ氏は「世界は中国が南シナ海を自らの海洋帝国として扱うのを認めない」と発言しました。でも先ほども言ったように、アメリカが、国務長官がこういうことを公式に言ったのは初めてです。オバマ政権のときもそうでしたが、アメリカは中国との貿易量も多いので、結局何も言わず中国の横暴を許してきたわけです。

実は日本の尖閣諸島も同じです。先日もお伝えしたように、中国は毎日のように尖閣諸島沖にやってきて、日本の隙を狙っています。隙があればとられてしまいますよ。ベトナムやフィリピンとは違い、海上保安庁は365日24時間体制で、しっかりと守っているからなんとかなっていますが、はっきり言って現憲法下では限界があります。1972年5月15日にアメリカは沖縄を日本に返還しましたが、その1年前の1971年6月17日にそれを定めた沖縄返還協定に日米が調印しました。

日本は第二次世界大戦に敗れ、沖縄や奄美、尖閣諸島などはアメリカの信託統治、すなわちアメリカの施政下になったんですね。その施政権を日本に戻すのが返還協定ですが、その沖縄返還協定には「沖縄などを戻します」なんてアバウトに書いてあるのではなく、緯度や経度がしっかりと書かれています。この中に尖閣諸島が入っています。

ところが、アメリカが「尖閣諸島は日本の領土だ」と言ったことはいまだ一度もありません。アメリカに東京都は日本の領土かと聞いたら、「そうだ」と答えるでしょう。では、沖縄は日本の領土かと聞いたら、「そうだ」と絶対に答えるでしょう。ではなぜ、尖閣諸島についてアメリカが言及しないのか。それは1970年代に入って、中国が「あそこは俺たちの島だ」と言い始めたからです。要するに南シナ海と同じで中国に忖度をしているということなんです。しかし、一時的に自分たちの施政下に置き、日本に返した自覚があるにもかかわらず言わないアメリカは本当に2枚舌。

今回の南シナ海だってそうですが、米中対立が深まっているからポンペオ氏が発言したわけです。私は今こそ、安倍総理とトランプ氏との関係の中でトランプ氏に、「尖閣諸島は日本のものだ」とはっきり言わせてほしい。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。