連載⑤ 障害を持つ子どもたちを助けるICT

今日は少し話題を変えて、障害を持つ子どもたちを助けるICTを紹介する。

米国・食品医薬品局(FDA)は、6月15日に、注意欠如・多動障害(ADHD)の治療を目的としたゲームをデジタル療法として承認した。このゲームは他の療法や投薬、教育プログラムと合わせて使用され、認知機能を改善する効果がある。わが国では塩野義製薬が独占権を持ち、有効性と安全性を探索的に検討する第2相臨床試験が実施されているそうだ。

FDAが承認した「EndeavorRx」(公式サイトより)

株式会社LITALICOは、発達障害の子どもを支援するゲーム「にゃんタップ」を世界に向けて配信した。子どもの歯みがきを楽しく習慣化するアプリ『ポケモンスマイル』に技術協力したとの報道発表もある。

ゲームは子供に悪影響を与えると香川県は条例で規制しているが、ゲームを治療に、そして生活習慣の定着に利用する方向に世界は動いている。

ディスレクシア(難読症)の子どもは特定の文字とその読みとの対応付けが困難である。鳥取大学では、これを緩和する解読指導と、その先で語彙を充実させる語彙指導をアプリとしてして提供している。

鳥取大の「ディスレクシア音読指導アプリ」(App Storeより)

フランスのFACIL’itiが提供する支援機能が搭載されたサイトでは、たとえば、英文字の「b」は背景をピンクに、「d」はブルーに染めて表示する。これで、ディスレクシアの子どもも「bed」を「deb」とは読み違えない。FACIL’iti機能はすでに日本語にも対応しており、「た」と「な」の背景色を変えるといった設定が可能である。

文部科学省・新しい時代の特別支援教育の在り方に関する有識者会議では、特別支援教育のICT化(ICT 機器の活用、個 別最適化した学習の推進など)について、基盤整備や研究開発の在り方が議論されている。同省サイトには「ICTを活用して学びのスタートラインを切る」というPDFも掲載されている。

パソコンやタブレットの進化は急速で、今では音声読み上げ、音声認識などの機能がOSに標準搭載されている。手書き文字をカメラで読ませればテキストになるといったアプリも利用できる。これらも障害を持つ子どもの助けになる。

ICTは障害を持つ子どもたちを支援し、成長後の社会参加に役立つ。それは共生社会実現の第一歩である。

しかし、コンテンツがアクセシビリティに対応していなければ、これらのICTも宝の持ち腐れになる。たとえば、画像PDFは読み上げ出来ないから、画像が何を訴えているか、視覚に障害をもつ子どもには理解できない。

コンテンツのアクセシビリティ対応と、支援技術の開発・提供は表裏一体で進める必要がある。