ふるい都議会をあたらしく~ 議員定数が変わるけど、議会は変わらない

奥澤 高広

Wikipediaより:編集部

こんにちは、東京都議会議員(町田市選出)
無所属 東京みらい おくざわ高広です。

昨日は、議員定数条例の改正案が出され、採決が行われました。

結果としては、
練馬区の定数を6人から7人に、大田区の定数を8人から7人にする「1増1減案」が可決されました。

以下、賛否。

◎は提案者、〇は賛成、×は反対

1. 議員定数とは?

東京都議会には127人の議員がいますが、選挙区のエリアや各選挙区における議員の数が条例で規定されています。

例えば、私は町田市選挙区で4人の議員がおり、お隣の斉藤議員の南多摩選挙区は多摩市と稲城市であわせて2人の議員となります。

2. 議員の数はどう決まる?

2019年2月5日の最高裁判決によると、

「各選挙区における議員の数は、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とする」

とされており、人口が多いほどに議員の数も多くするべきとなりますが、例えば昼間の人口の多いエリアや島しょ部などの地理的に特徴のあるエリアは、特例も認められると考えられています。

3. 議員の数はどう変える?

議員の数や選挙区のエリアを変えるには、条例の改正が必要ですが、都議会の場合は、

「定数検討委員会」→座長報告→「条例改正案」の提示→採決→多数をとった案が採用されます。

4. 都議会の議員の数はどこに問題があるの?

2015年度に実施された国勢調査をもとに考えると、人口と議員の数が合わない選挙区が8つあるとされています。

最高裁判決によると、

「合理的理由が説明できない限り、早急に是正が検討されるべき」

という意見が付されており、定数検討委員会での議論においても、こちらをベースにしているものが大半でした。

5. どんな議論があったの?

定数検討委員会は、「原則として非公開」であり、「座長が必要と認めた場合は公開できるもの」とされています。

私も途中、公開での議論を求めましたが、叶いませんでしたので、どのような議論があったのか書いておくと、

  • 大田と杉並を1ずつ減らし、練馬と江戸川を1ずつ増やす(2増2減)
  • 全ての選挙区を是正すべき
  • 1票の較差の大きいところに着目し、新宿1減、江戸川1増案
  • そもそも定数を減らすべき

といった内容がありました。

しかし、昨日の共産党の討論でもありましたが、それまで一度も議論されなかった1増1減案が、座長報告案として登場しました。この過程は検討委員会の委員であった私にも分からない中で、突如として登場しましたが、検討会の最後に、都民ファーストの会より提案されたものだと座長より報告がありました。

6. 無所属 東京みらいはなぜ反対したの?

私たちは、上記8選挙区の全てについて是正すべきと考え、上程された改正案にはどちらも反対をしました。その理由について、詳しくは討論を行いましたので、後段に掲載しておきますが、以下2つの観点から議論を重ねました。

総定数については、東京都は127人と全国一位ですが、定数を人口で割ると10万人を超えており、これも全国一です。つまり、議員一人当たりが声を伺うべき相手が多いということであり、減らすべきではないと考えました。

選挙区定数については、都民の皆様の理解を得られる合理的理由がないとして、4増4減を求めました。なお、都議会では11人以上の賛同者がいないと条例を提出することができないため、今回は反対をするという選択肢しかなかったことを付しておきます。

7. まとめ

今回の経験からの教訓は、議員自身が議員定数を決めることは困難!

だからこそ、議論の過程を公開することが、都民の皆様の充分な理解や、公正で信頼のおける都政運営に繋がるものと考えます。

昨日可決された1増1減案について、否定するものではありませんので、賛成の立場をとるべきか非常に悩みました。しかし、私たちが3年前にお約束したのは、「ふるい都議会をあたらしく」することであり、自身の立場を守るのではなく、「都民の利益」を最大化する仕組みをつくることでした。

検討委員会においては、もっと意欲的な改革案が出ていたにもかかわらず、そこに踏み出せなかったことは残念であり、大変悔しい思いであり、さらに精進しなければならないと想いを強くしています。

8. ウラ話

条例案への賛否を決めるに際して、会派の仲間2人と議論を重ねる中で、うれしい言葉があったのでご紹介しておきます。

私から、

「1増1減案に賛成することも小さな改革をしたといえるという意味で選択肢ではないか」と話した時に、

斉藤議員より、

「自分の立場よりも原理原則を大事にしなければいけない。自らの立場を守るための妥協はしてはいけない。」との言葉や

森沢議員より、

「将来、もし自分の選挙区が減るとなっても、それは受け止めよう。」といった言葉があり、

大変勇気づけられました。

想いを同じくする仲間と、最後まであきらめずに「ふるい都議会をあたらしく」するために取り組んでいきます。

以下、討論全文。

「ふるい都議会をあたらしく」

3年前、都民の皆様にそうお約束して、私たちは第20期東京都議会に送り出していただきました。その期待とは、社会の常識とはかけ離れた論理で物事が決まっていく「ふるい政治」から脱却し、時には自らの立場を犠牲にしても、ひたすらに「都民の利益」のために最善の判断をしていく政治へと、その仕組みや機能をあたらしくしてほしいというものであるととらえています。それは、都議会の勢力がどのような状況になっても、将来にわたって担保されていくべきものであり、そのための改革を託されたのが、私たちの役割であると考えてきました。

そのような意味から、議員定数、とりわけ各選挙区の定数は、より多様な民意を適切に反映させるために、重要な仕組みの一つです。私たちは、以下の2点に着目して議論を重ね、今回提出された議員提出条例第14号と第15号のいずれにおいても、反対の立場をとるものです。

第一に、「総定数」についてです。都議会定数127人は、全国一位ですが、人口を定数で割る、つまり、議員一人が声を伺うべき相手がどれだけいるかということですが、これは10万人を超えており、全国一位です。さらに人口が増えつづけ、かつ仕事や観光などの理由で行き交う人も多い東京都においては、少なくとも減らす要素はないと考え、127とすべきと考えるものです。

第二に、「選挙区定数」についてです。選挙区定数については、座長報告には、平成31年2月5日の最高裁判決において、「合憲・適法」と判断されたとありますが、私たちは、その判決に記載されている見解や付されている意見について重く受け止めています。

文中には、「都道府県議会の議員の定数の各選挙区に対する配分につき、人口比例を最も重要かつ基本的な基準とする」旨が記載されています。さらに、裁判官の一人からは意見が付されており、「地方議会議員については、その選挙区(コミュニティ)の代表としての色合いが濃くてしかるべき」ことや、「合区とする必要がある場合には単に便宜というよりも、地理的・経済的基盤等をなるべく共有するとの観点」の重要性が示されています。人口比例の原則の「緩和の程度については、十分かつ合理的な理由があり、それが明確に説明可能であるか」といった観点からの検証が必要であり、人口比例定数と条例定数の不一致がみられる選挙区については、「合理的理由が説明できない限り、早急に是正が検討されるべき」と締めくくられています。

このような観点から、人口比例定数と条例定数の不一致の大きい練馬区と大田区の1増1減のみを行うことは適切ではなく、不一致がみられる8選挙区全てについて是正すべき、つまり4増4減を行うべきであると考え、第15号には反対するものです。また、千代田区と中央区の合区については、地理的・経済的基盤等を共有するか否かという観点での議論が不充分であり、時期尚早と考えることから第14号に反対するものです。

最後に、「定数検討委員会のあり方」について一言申し上げます。その設置要綱には、「検討会は、原則として非公開」であり、「座長が必要と認める場合に公開することができる」とされています。

定数は、議員の立場に関わることであり、議員自ら是正をすすめることは大変難しいことであると今回改めて実感しました。だからこそ、議論の過程を公開することが、都民の皆様の充分な理解や、公正で信頼のおける都政運営に繋がるものと考えます。そのような観点から、私も含め、公開での議論を求める声があったことを、ここに残し、次期の定数検討委員会に活かされることを切に願うものです。

引き続き、私たちが最初にお約束した「ふるい都議会をあたらしく」することを、最後まであきらめず取り組んでいくことをお誓いし、討論を終わります。


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2020年7月17日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログをご覧ください。