このコラム欄で中国関連記事を書く機会が増えてきた。ソ連・東欧共産政権の崩壊を取材してきた当方にとって、「次は中国共産党政権の番だ」という思いがあるが、中国は人口14億人、世界第2の経済大国だ。その中国共産党政権が崩壊した場合、ソ連・東欧圏の崩壊時を上回る大混乱が予想されるだけに、中国のソフトランディングが願われるわけだ。
中国共産党政権は来年7月、党創設100年の節目を迎える。習近平国家主席は党歴史に残る実績を挙げて迎えたい思いがあるだろう。昨年末の新型コロナウイルス問題でその野心に水が差された感じはするが、放棄はしていないはずだ。中国海軍はここにきて南アジア海域で積極的な軍事活動を繰返している。習主席が「銃口から政権は生まれる」と述べた毛沢東のような冒険の道を選ぶ危険性は完全には排除できない。
それでは軍事衝突なく中国共産党政権を崩壊に導くシナリオは考えられるだろうか。ないわけではない。中国共産党政権が最も聞きたくない内容を繰返し追及することだ。それは中国共産党政権の出自、「一党独裁国家」、「人権蹂躙国」、そして数多くの国民を粛正してきた歴史を有する国家であることを指摘し、その「共産党政権」と「中国国民」は全く別だという点を明確に主張していくことではないか(「『中国共産党』と『中国』は全く別だ!」2018年9月9日参考)。
中国共産党政権は中国民族の正統な後継者ではない。悠久の歴史を誇る中国で共産党政権が政権を掌握してきた期間は100年にもならない。中国共産党政権時代は中国の歴史ではわずかな瞬間だ。外部から持ち込まれた「共産主義思想」という唯物思想を国是とした国家に過ぎないのだ。
トランプ米政権は中国共産党政権といがみあっているが、中国国民やその文化と衝突してはならない。そうすれば中国共産党政権の思う壺に嵌る。声を大にして批判し、追及すべきは中国共産党政権だ。
中国共産党政権と中国国民は明らかに異なる。両者が同一ではないことを明確にすることが、中国共産党政権を崩壊に導く最短手段であることに気が付いた。中国共産党政権は自身の弱点を知っているから、米国から人権問題で批判を受ければ、中国国民への批判のように吹聴し、国民を反米に煽ってきた。中国共産党への追求はイコール中国全体への批判のように振舞うわけだ。これが中国共産党政権の常套手段だ。
新型コロナウイルスの感染拡大と初期段階の事実隠蔽が発覚し、中国共産党政権と国家のイメージは一段と悪化してきた。欧米諸国はここにきて中国包囲網を構築する一方、中国の人権問題にも積極的に抗議する傾向が出てきた。
それに対し、習近平主席は、国民に愛国心を懸命にアピールし、その批判に応戦している。中国国民は騙されてはならない。共産党政権が叫ぶ愛国心はあくまでも一党独裁政治を堅持するための手段に過ぎないのだ。共産党政権は過去、中国本来の伝統的文化を破壊し、一党独裁の国家を樹立するために、多数の同胞を粛正してきた。その点、スターリン時代のソ連共産党と同様だ。
中国共産党政権は今後、状況が厳しくなれば愛国心を国民にアピールし、中国を批判する政治指導者や欧米のジャーナリストに反中政治家、反中ジャーナリストの烙印を押して批判をかわそうとするだろう。欧米諸国は今後、「我々は中国国民を支援する。国民の基本的権利を蹂躙する中国共産党政権を打倒しよう」と呼びかけるべきだ。
中国共産党の党員数は8000万人から9000万人と推定されているが、党員数がここにきて減少傾向だ。共産党幹部の中には、党員証より、会社社長の名刺を重視する拝金主義が広がっている。イデオロギーに凝り固まった共産党員はもはや少数派に過ぎないことは周知の事実だ。
その一方、宗教を信じる共産党員が急増してきた。中国の反体制派メディアによると、約2000万人の党員が何らかの信仰を持っているという報告すらある(「中国の未来を握る『精神の解放』」2012年7月27日参考)。
習近平席は新シルクロード「一帯一路」を提唱し、アジアから中東、欧州、アフリカと連携、アフリカ北東部のジブチには中国の軍事基地を有し、世界の制覇を目論んでいる。一方、多くの中国人は世界の国民と親しく交流し、相互支援の社会の建設を願っている。
中国共産党政権が「国家安全維持法」を香港にも導入した直後、英国のジョンソン首相は1日、香港市民300万人に市民権や永住権を申請する道を提供すると表明し、民主化運動を推進する香港市民に連携を表明した。すなわち、中国共産党政権と香港市民とは全く別だという認識に基づいた政策だ。
繰り返すが、中国共産党政権は悠久な中国の歴史の所産ではなく、共産主義思想から生まれた無神論的唯物論をバックボーンとした独裁国家だ。中国文化の継承者ではないことを明確に認識し、中国共産党政権には正統性がないことを声を大にしてアピールすべきだ。次の「逢九必乱」を迎える2029年前にも中国共産党政権が崩壊することを願うばかりだ。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2020年7月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。