都内における公的シェアサイクルは必要なのか?

加藤 拓磨

結論からいえば、およそ4300万円を使って中野区にシェアサイクルを導入すべきだったか検証を促すものである。

中野区が7月20日から、23区中11番目にシェアサイクルに参画した。

運営はドコモ・バイクシェア、すでに参画している千代田区、中央区、港区、新宿区、文京区、江東区、品川区、目黒区、大田区、渋谷区に中野区が加わり計11区でシェアサイクルが利用可能となる。

ポートといわれるエリアにシェアサイクルの自転車本体と駐輪場があり、スマートフォンを利用することで下記の料金で使用できる。

(参考)中野区シェアサイクル

栄町公園N4-02ポート(筆者撮影)

30分以内の利用であれば最低価格の税抜150円、税込165円となる。おそらくはバスに乗るよりも安く、東京メトロ初乗り168円より抑えた価格であると考えられる。

私は地図の5番から8番へ41分間の利用し、275円(税込)の利用料となった。

電気アシスト付き自転車であるために非常に軽快なサイクリングであったが、結果的にはバスで移動した方が値段的にお得であるし、目的地はポートよりも距離があったためにそれなりの歩行が必要となった。

またコロナ禍において不特定多数が利用した自転車のハンドル等に触れることに対する抵抗がある人もいるだろう。

シェアサイクルはシェアリング事業の中でもかなり歴史が長く、オイルショックまで遡る。

発想は自転車普及による省エネを図るはずが、その環境負荷削減効果は認められない。

それどころか、駅周辺などの特定ポートに自転車が集まってしまうため、自転車を元の場所に戻すのにトラックを使うため、余計なエネルギーを使う。

またポート周辺の住民は自分の自転車があるため、地域、条件によって異なるが自転車を借りずに、ほとんど利用率は上がらない。

そうするとシェアサイクルの導入のメリットは住民以外が使うことにある。

つまり観光客の足としての利用である。

私も京都、金沢、松山などで使ったことがあるがバス、タクシー利用するよりもシェアサイクルで周った方が、多くの観光資源を巡れ、各箇所でお金を落としてもらえる可能性があり、自治体として事業を推進する価値は十分にある。

しかしシェアサイクルを運用する上で車両の維持管理費がかかる。

ICT技術の発展により、スマートフォンを介し、無人で利用が可能となった。

またGPSによるビッグデータを利活用することで運営者は別の利益を得られるスキームが確立され、事業として成立するようになってきた。

だが今回、中野区のシェアサイクル事業は、およそ4300万円(およそ半分は東京都の補助金)の公的資金が入っている。単純計算、区民33万人で割ると一人130円払ってこの事業を支えていることになる。

上述より自治体住民が導入をしてもいいと考えられるパターンとしては観光地であることが必要条件であると考える。しかし中野区には他区からわざわざ自転車に乗って見に行きたいと思える観光資源は今のところ皆無である。

他の利用を考えると(1)UberEatsの配送員、(2)ホテルが数えるほどしかない中野区としては民泊宿泊者が他区の観光地に赴くため、(3)地元住民がシェアサイクルで飲み屋に行き、帰りはタクシーなど利用するパターン、などが数えるほどしか想定ができない。

そしてこれらの利用者に対して、税金を使ってまで事業を維持する必要があるのか、区民のために資するものになっているのか、検証が必要だと考える。

この制度は今年度から3年間、東京都から半額補助金が出るが、それ以後は区の100%の財源となる。

区が公園におけるポートの占有を無料にする程度ならばいいが、それ以後も区の財源を使ってまで続けるならば、短期間で見直すことも必要と考える。