コロナ:中国での発生は偶然、日本での拡大は必然でも科学は不可欠

emmanma/写真AC

中国の発表が正しければ、新型コロナウイルスの発生は自然による偶然だが、初期の過小評価によって、必然が起こり、世界的な大惨事につながっている。日本のコロナ拡大は、すべて必然だ。6月中旬に東京はすべての自粛を解除した。5月の1週間前倒しの緊急事態宣言の解除もそうだ。残り火がある段階で、風で煽ったのだから、再び火勢が増しても、これも必然の結果だ。

前に進めと言って急発進した後に、急ブレーキを踏み込めば、乗客はむち打ち症になる。東京の旅行業界は、まさに、GoToむち打ち状況だ。山火事が消えつつあるものの、残り火がはっきりと見えているにもかかわらず、消防隊を引き上げれば、そこからまた拡大する。

韓国も中国も一旦はゼロに抑え込んだ。しかも、PCR検査を徹底したので、残り火を完全に消そうと国が努力した。我が国はPCR検査も徹底しないままに、消防隊を撤退させた。すべてが、中途半端に、必然的に事態が徐々に悪化しつつある。海外から見れば、日本はこの程度の国だったのかと必然的に見下すので、日本神話を崩すには十分すぎる悲惨さだ。コロナを契機に、医療ツーリズムなど吹き飛ぶだろう。

しかし、救いは、患者数の増加の割には、死亡数が増えていないことだ。5月上旬の世界の1日当たりの感染確認数は7000-9000人だった。最近は20万人を超えて3倍近くまで増えている。それに対して、5月初旬の1日当たりの死亡者数4000-5000人に比べて、最近は5000人前後と、感染者数増には比例していない。

感染は広がっているが、毒性が高まっているわけではない。米国のテキサス州やマイアミ州などで感染拡大が続いているが、感染者のうちの死亡者の割合は、1.2-1.5%と、7%台のニューヨークやニュージャージー州よりも明らかに低いのだ。

東大の名誉教授が、東京―埼玉型のウイルスだと国会で危機を強調していたが、そのウイルスがどのようなウイルスなのか冷静な科学的考察・議論が必要だ。日本は依然として科学リテラシーの欠如したコロナ対策だと思う。

しかし、高年齢層には危険なウイルスであるという事実は無視できない。そして、私はコロナによるテレワークと車での移動で足腰の弱体化が顕著になってきた。長い階段を下りている時に膝がカックンする時がある。マスクによる酸欠かもしれないが、間違いなく脚の筋力は落ちている。高齢者の転倒による大けがは他人事だと思っていたが、そうでもないらしい。あわや…..がすでに起こっている。

コロナも怖いが、筋力の低下も怖い。この問題はほとんど議論されていないが、これはボディブローのようにこの国の力を削ぐことになるだろう。GoToでドタバタしている状況では、先を考える余裕はないだろうが、高齢者の要介護が増えると、医療保険制度は破綻する。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年7月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。