新型コロナウイルスは、世界も、日本も、私たち個人にも、本当に大きな歴史的事実として後で振り返ることになると思います。そもそも、まだアフターコロナになっておらず、ウィズコロナの状態がいつまで続くのかわからない状況です。また、ウィズコロナ期間の長さによっても人の心理はまた変化をしていくと思われます。
こうした歴史的に大きな出来事が起こると人の心理がどのように変化していくのでしょうか。過去に起こった大きな出来事で、人の心理がどう変化したのか、少し振り返ってみたいと思います。
リーマンショックが起きたのは2008年の9月でした。この出来事が発端で、株価暴落、企業業績の悪化、企業倒産、派遣切り、就職難が引き起こりました。出来事からおよそ1年後の2009年夏に出た、ある民間の消費行動変化という調査結果を見てみましょう。
この段階で、暮らし向きが悪くなると考えていた日本人は6割を超えています。ちなみにこれは、同じ調査をした15ヶ国の中で最高に高い、すなわち日本人が最も悲観的だったということです。こうした心理のもとで消費行動が変化しました。
『「割安な代替品があっても、信頼・好感のある、あるいはなじみかブランドを使い続けること」が変わらない・増加した』と回答した人が、なんと82%にのぼりました。なんですね安心感を求めるという一方で、徹底した安さの追求ではないということですね。他にも、『「セール期間や特売日を待って買い物をすること」が増加した』と回答した人が38%、『「家族との団欒」増加した』と回答した人が16%もいました。
さらに、同じ頃に行われた別の民間調査で、節約と贅沢の意識を調べています。その結果をこうなっています。
節約の意識について見てみると、「いつも意識している」「時々意識している」と答えた人の合計は、調査機関全てにおいてほぼ同水準で80%ほどです。ということは、節約意識に変化はありませんが、一方で贅沢なお金の使い方については、時を経るごとに増えていきました。この調査結果に対するのコメントは、メリハリをつける消費が強まっていると書き記されていました。これは、リーマンショック前からの景気低迷もあって、賢く節約した分自分へのご褒美消費を楽しむという傾向を指摘しています。
さて、アメリカの広告大手のヤング&ルビカム社がリーマンショックと格差の拡大が消費者の価値をどう変えたのかについて調べています。その結論の一つは、「虚栄心や快楽の追求ではなく、親友のように寄り添ってくれる会社や人、商品を求める」としています。また、「これは先進国に共通した現象だ」として、大量消費の量から質への変化とも言っています。
いつまで続くのか、そして経済的にどこまで厳しくなるのかによって人の心理は変化していくと思われます。また、新型コロナウイルスはリーマンショックのように金融から始まった経済的な危機とは違い、まさに生命が脅かされるウイルスが原因です。そう考えると、根本的には「命があることがありがたい」という意識が芽生えたり、また今までの中央方式の変化、例えば人が集中する都会自体がリスクというものもありますね。だとすると、より健康志向で実質的な価値を求める消費行動であったり、きらびやかな都会よりも自然の空気を胸いっぱい吸える、ローカルに移住する行動がおこるかもしれませんね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年7月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。