今週のメルマガ前半部の紹介です。立憲民主党と国民民主党が合流を視野に議論を続けているとのこと。早ければ年内の解散総選挙が予想される中、現状のままでは各個撃破されるという危機感が強いのでしょう。ただ、漏れ聞こえてくる話からするにかなりモメている様子です。※8.11付で国民民主党の玉木代表が分党を表明するも翌日政調会長が否定。
そもそも彼らはどうして分裂したんでしょうか。いい機会なのでまとめておきましょう。実はサラリーマンとも大きく関係する話でもあるんです。
民主党の本来の立ち位置
ここである政党の結成宣言を紹介したいと思います。
国民は、政府を信任していない。市場は、政府に不信任を突き付けている。政官業癒着の構造の上に成り立つ自民党政権は、国民負担を増加させる一方で、国民生活の将来に不安を残し、市場経済の活性化の道を閉ざしている。
さて、この政党とはどこでしょう?“市場経済の活性化”なんて出てきたので、たぶん多くの人は維新やみんなの党を連想したんじゃないでしょうか。
でも正解は民主党なんです(「統一会派結成宣言」 1998年1月7日)。民主党というのは本来、市場経済を重視する構造改革推進派だったんですね。
米国の二大政党制が典型ですが、一般的には保守というと小さな政府で市場重視、リベラルは大きな政府で規制大好きというイメージがあります。
その点、日本の保守・自民党はとても異色で、一次産業を規制でがんじがらめにしつつ関税や補助金で餌付けして自らの支持基盤にしたり、何かにつけて巨額のバラマキを繰り返す超大きな政府路線なわけです。
上記の宣言中で「政官業癒着で国民負担を増加」とあるのはまさにそのことですね。農家のために輸入農作物にかけられた高い関税を我々消費者が負担させられているのが典型です。
要するに、保守の看板掲げてるけど規制とバラマキ大好きな自民党に対し、もっとオープンで市場経済重視した路線で対抗しようとしたのが民主党ということです。イメージとしては都市部のサラリーマン世帯がメインの支持層でしょう。だから連合も彼らを支援したわけですね。
憲法とか右か左かなんて全然関係ないですね。ちなみに「民主党10年史」では社会党のことを「日本社会党という困った同胞」と一刀両断しています。
このスタンスが上手く状況にフィットしたのが、例の政権交代です。「自民党をぶっ壊す」といって構造改革路線(実際は郵政民営化くらいですが)を推進した小泉政権の反動もあってか、その後の自民党政権は昔の体質に戻る動きが顕在化しました。
中でも麻生総理の「自分は本当は郵政民営化には賛成じゃなかった」発言は致命的でしたね。もうこれ以上の構造改革はやる気ないですと言ってるようなものですから。
結果、残された構造改革の担い手である民主党に追い風が吹き、まさかの政権交代となったわけです。
ただし、実際に政権を取ってみて、既得権にメスを入れることの難しさに初めて直面したんでしょう。3年間の与党時代、実のある改革にまったく手を付けられないまま再び政権の座を明け渡し、その後は急速に構造改革路線を薄めていきます。
筆者が決定的なターニングポイントだったと考えるのは、2015年の安保法案採決時の対応です。国会前でバカ丸出しでプロ市民と大声を張り上げて騒ぐ姿を見て、それまで辛うじて残っていた改革政党としての期待が周囲から完全に消え失せたのをはっきりと記憶しています。
当時、おそらく翌年の参院選までに民主党は消滅するだろうと予測しましたが、→民進党→分裂という形でそれは実現してしまいました。今回の合流が実現するかどうかはわかりませんが、自分たちの原点を取り戻さない以上、無党派層から相手にされることはないでしょう。
【参考リンク】民主党が死んだ日 「安保法案」騒動で露呈したコト
以降、
2つの民主党がモメるわけ
いま必要なのはサラリーマン政党
Q:「○○○が急にアグレッシブになってますが……」
→A:「社長がイケイケらしいですね」
Q:「れいわと共産党の微妙な関係でしょうか?」
→A:「筆者も実は両党は微妙にスタンスが違うと思いますね」
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編集部より:この記事は城繁幸氏のブログ「Joe’s Labo」2020年8月13日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はJoe’s Laboをご覧ください。