多摩大学ルール形成戦略研究所(CRS)が動画配信プラットフォームとして立ち上げた「CRSTube」が開局し、看板番組として「イノベーションとルール形成」がスタートしました。
開局記念の第1回は、ゲストに、自民党ルール形成戦略議員連盟事務局長 中山展宏衆議院議員をお招きして「政治におけるルール形成戦略」というテーマで対談しました。ルール形成、正に政治の世界はルールを作る場所です。与党である自民党のルール議連が、旬のテーマとしている2点を今回取り上げさせてもらいました。
1つ目は、国際機関の人事、日本人が長を取りに行くという事。2つ目は、経済安全保障という視点で経済を見るという事です。今後の日本経済にとって極めて重要な論点だと思います。
国際機関は色々な種類のものがあります。例えば、国際連合(国連)の専門機関で言えばWHO(世界保険機関)、国際電気通信連合(ITU)、国際労働機関(ILO)等があります。こうした機関は正に国際的なルールを決める場所となっているのです。こうした専門機関で「長」をとることは、各国に公平であることは前提ですが、議論を有利に進めることが現実的には出来るのです。
しかし、これまで日本は、国際機関にお金を出す事、職員を派することで貢献はしてきていますが、積極的に「長」をとることをしてきませんでした。逆に言えば「長」を取れるような人材を国際機関の選挙に立候補させてこなかったということでもあります。
「長」の選挙には、各国、閣僚経験者を中心に候補者を選んでくるのです。日本も閣僚経験者を据えて、「長」を取りに行くべきなのです。それも、議員を引退した後ではなく、現役バリバリの閣僚経験者が良いと思うのです。国会議員のキャリアパスとして、新たな道筋を作り上げ、国際機関の長を務めたキャリアを持って、総理になるような事が出来れば、国の為にもなるというものです。
そもそも選挙が得意なのは、政治家ですから…。国連常任理事国入りを目指すより、国際機関の「長」を取りに行く事の方が現実的だと思うのです。
「安全保障を経済に使う」という意味においては、米国は、トランプ政権になったからではなく、以前より、安全保障経済政策というやり方で、経済を広げてきているのです。どんな理由より、「国の安全保障上、良い、あるいは悪い」を言われた返す言葉がなくなります。また、理由を聞いても「国の安全保障上、言うわけにはいかない」となるのです。
つまり、ある意味、ブラックボックス化するわけなので、覆すのは難しいのです。また、結論を出さずに「安全保障上の懸念がある」と言わ続ければ、エンドレスで懸念が続くのです。もちろん、軍事力があり、世界の警察官故に、使いこなせるということでもあります。
良い悪いではなく、日本も安全保障経済政策を考える必要があると衆議院議員時代に作ったのが「ルール形成戦略議員連盟(会長:甘利明・事務局長:福田峰之)」です。落選した後、今回のゲストである中山展宏衆議院議員に事務局長をお願いしました。今では「経済安全保障」と言うようになり、日本でも関心が高まってきています。経済安全保障を考える場合「ルールをどうつくるか」という視点が最も重要になります。
データを例にとると、個人のデータは、誰が、どこまで使えるのか、というルール決めです。個人と企業が、契約して個人データを企業に渡す。企業は、自国にどのような場合に個人データ提供するのか決める。企業及び自国は、どのような場合に他国に個人データを提供するのか決める。自国は企業のどのような場合に個人データを提供させるのか決める。他国は、企業の持つ、個人のデータをどのような理由で、提供させるのか…。
スタートの個人がどこまで納得できるのか、自国が他国で、自国民のデータが使われることをどこまで許容するのか、こうしたルール決めが大切になるのです。ルールが守られないなら、経済行為に制限をかけるということもやらなくてはいけません。
日本にとっての経済安全保障は、どの国に対しても等しいものです。世界平和に貢献しつつ、日本国民が豊かに幸せに暮らせるためのものでなくてはいけません。お人好しで、世界に挑むのは無理があります。軍事力、外交力が無い日本は、力でねじ伏せることは出来ません。なら、自分たちに立ち位置を明確にして、経済をつくるしかないのです。だからこそ、経済安全保障を理解し、海外との貿易、データ活用を賢く拡大することが大切なのです。
国際機関の「長」をとりにいき、日本のルール形成力を高める。経済安全保障を施策に取り入れ、ルールで経済をつくる。「政治におけるルール形成戦略」の一端がここにあります。中山展宏衆議院議員の今後の活動から目が離せません。
編集部より:この記事は多摩大学ルール形成戦略研究所客員教授、福田峰之氏(元内閣府副大臣、前衆議院議員)のブログ 2020年8月14日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。