ベネズエラの原油密売にメキシコ企業が協力

ベネズエラのマドゥロ大統領の味方になっているのが、アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)大統領が誕生したメキシコである。

メキシコの通称アムロ大統領(本人ツイッター)

米国の制裁下にあるベネズエラに対して今年6月、メキシコのアムロ大統領は、人道上の立場からマドゥロ大統領の要請があればガソリンを送る用意があることを表明した。世界最大の原油埋蔵量を誇るベネズエラは、皮肉にも現在、深刻なガソリン不足に陥っているからだ。

ところが、それから3日後、米国政府は牽制するかのように、メキシコの2社が米国の制裁を無視して違法にベネズエラの原油を販売していることを発表した。

この2社というのはリブレ・アボルド(Libre Abordo)とその子会社シュラガー(Schlager)で、両社とも石油ビジネスには新参者であり、米国は当初から不審を抱いて調査を進めていたという。米国は両社に制裁を課し、リブレ・アボルドの共同経営者オルガ・マリア・サペダ・エスパルサと彼女の母親ベロニカ・エスパルサにも同様に制裁を課して、米国に所有しているすべての資産を凍結させるとともに、米国で取引している8社との関係維持も禁止となった

この2社はベネズエラから3000万バレルの原油を破格の値で手に入れて、それと交換で21万トンのトウモロコシと1000タンクの飲料水をベネズエラに送るということになっていた。ところが、実際にベネズエラに発送したのは500タンク分の飲料水だけだったことが、その後の米国が調査で明らかにされた。

更に、追跡調査で明らかにしたのは、2社が輸入した3000万バレルの原油はメキシコで消費するのではなく、マレーシアやシンガポールに転売していたということだ。両社が報道機関に唯一明らかにしたのは、売り先は既存の石油に関係した企業ではなく、またロシアのロスネフチでもないということだけだった。

この取引の背後にいるのがマドゥロ大統領であるのは明白で、米国からの制裁の隙間をぬってベネズエラ石油公社の原油を販売することが目的である。それに協力しているのがレバノン出身のコロンビア人アレックス・サーブと彼に協力しているホアキン・レアルである。彼らはマドゥロ政権の前副大統領で現在産業相の同じくレバノン出身のタレク・エル・アイサミと組んで原油を販売して、その代金でベネズエラで不足しているトウモロコシなど食糧を輸入しようとするプランであった。

ベネズエラのマドゥロ大統領(本人ツイッター)

例えば、メキシコの2社が輸入した3000万バレルの原油は3億ドル(320億円)相当に値するもので、今年4月にベネズエラ石油公社が輸出した原油の4割に匹敵すると米国の財務省は調査で明らかにしている。 (参照:abc.es

販売した売上の全額を食料の仕入れに充てるのでなく、残金はマドゥロや彼に関係した人物らの懐に入る。しかも、輸入した食糧は3倍の価格で正式にベネズエラ政府に販売するというものだった。

同じような手口で、今年3月にもメキシコの企業ホマディー(Jomaldi)がベネズエラから500万バレルの原油をトルコに送り、それと交換でハイオクのガソリンを買い付け、それをベネズエラの領海内でベネズエラのタンカーに積み換えるという作業をしていたことがFBIによって明らかにされた。同社のディレクターホセ・レフヒオ・ルイスは
ABCの取材でそれを否定している。(参照:abc.es

これらのプランをベネズエラ政府のタレク・エル・アイサミと協力して進めていたのが前述したアレックス・サーブだ。彼は北西アフリカの沖合にある諸島から成るカーボベルデ共和国で、インタポールからの指名手配により先月逮捕された。米国政府は早速身柄の送還を要求している。彼を米国に連れて来ればマドゥロの多くの企みが明らかになると期待されている人物だ。

なお、リブレ・アボルドは米国からの圧力で支払い不能に陥り9000万ドル(97億円)の負債を抱えることになった。