今年(2020年)4~6月期のGDP(国内総生産)は前期比でマイナス7.8%、年率換算でマイナス27.8%と戦後最大の減少率になった。この不況の最大の原因は、明らかに新型コロナ対策として行われた自粛要請や休業要請による経済の萎縮である。
その意味で今回の不況は100%政治のつくった「官製不況」なので、それを回復させることは経済的にはむずかしくない。自粛をやめればいいだけだ。しかしこれは政治的にはむずかしい。その原因は人々の錯覚にあるのだ。
ロックダウンで人命は救えたのか
日本の経済的ダメージは、世界的にみるとそれほど大きくない。図1はOECD(経済協力開発機構)が各国の4~6月期GDPを前年同期比で比較したものだが、日本の減少率は9.9%で、スペインの22.1%、イギリスの21.7%などに比べると軽微である。
その原因も明らかだ。図のように移動削減率(携帯端末の移動距離の減少率)との相関関係が大きい。つまりロックダウン(都市封鎖)が巨大な経済的被害をもたらしたことは明らかだが、それが人的被害を減らした効果ははっきりしない。
感染の拡大が止まったのがその効果だと思う人が多いだろうが、それは錯覚である。ロックダウンしなかった日本や台湾や韓国では、人的被害も少なかった。
そもそもlockdownというのは学術用語ではない。これはもともとテロ対策で行われた都市封鎖のことで、感染症に使ったのは、今年1月にWHO(世界保健機構)が武漢の感染爆発についての対策を打ち出したときが最初であり、ロックダウンで感染が減る根拠はない。
ロックダウンの定義ははっきりしないが、「外出禁止令」のこととゆるやかに考えると、これで感染が減ることは間違いないが、死者が減るかどうかはわからない。病院には呼吸器疾患に対応するスタッフと設備があるので、その医療資源の制約内なら死者は増えないからだ。