医療はこれまでとは非連続の大きな革命的変化が必要だ!①

私の予想がはずれ、感染数は少し抑えられてきている。しかし、この要因は政策的な取り組みではなく、国民、特に高齢者の自粛によるものだ。お盆休みの行動自粛は、信じがたいものがある。

写真AC:編集部

しかし、電車内では、マスクをしていない人も目につき、通勤が元に戻るとどうなることやら? コロナ感染の終息を迎えるまでには、おそらく、年単位の歳月が必要だろう。観光産業や飲食業のどれくらいが、コロナ騒ぎが落ち着くまでに持ちこたえることができるのか、心配になってくる。

昨日は、6か月ぶりの学会出張で、神戸に行き、日本小児科学会で特別講演をしてきた。うだるような暑さで、これまでの通常では、こんな時期に大きな学会はない。4月に開催予定が延期されたものだが、大半はWebによるもので、ごく一部が現地で行われた。

神戸国際会議場と隣接するポートピアホテルは、今まで見たことがないような閑散とした姿だった。多くの人が行きかう学会場が、人もまばらで、講演会場もカメラと会場内の大半が学会運営者だった。異質な風景で、どこを見て話をするのか戸惑ってしまった。

もちろん、周辺の飲食店は危機的な状況だし、全国の大きな会議場や近くのホテルも想像を絶するような減収であることは確実だ。しかし、関西の暑さは東京を凌駕していて、大阪空港から三宮までの空港バスの車内は冷房が効かず、降りる頃には熱射病のようにフラフラしてきた。

国内学会だけでなく、国際学会も壊滅的で、Web講演でかろうじて維持されているが、欧米で開催されているWeb会議は、時差の関係もあり、時間帯によっては講演を聞くのはかなり厳しいものがある。そして、この状態が続くと航空会社も大変だろう。雇用を守り、これまでのように経済を回していくのは困難だろうが、みんなで力を合わせて乗り切るしかない。

インフルエンザとコロナが同時に流行すると大変だという議論があったが、マスクや手洗いで子供の手足口病などは激減しているので、油断しなければ大爆発は起こらないのではという気がしてきた。「検査と隔離」が10-11月までにできるかどうかが決め手になる。

働かなければ収入が得られない人たちの大半は通勤を続けるしかないが、働いていない高齢者は、自宅に引きこもって、病院にも通わなくなってしまった。持病の悪化をどのようにモニタリングしていくのか、その体制作りが急務である。自覚のないままに、認知機能が落ちたり、身体的能力が落ちてくると厄介だ。

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われわれは加齢と共に、物覚えは悪くなるし、筋力も低下する。筋肉は個人差はあるものの数%ずつ低下してくるそうだが、動かなくなれば、使わなくなれば、そのスピードが増してくる。肉体的に鍛えられている宇宙飛行士でも、無重力空間に長期間滞在すると筋力は低下していく。

目に見えない形で、高齢者に認知能力低下、筋力低下が忍び寄っている。私も、歩いていて、少しの段差に躓くことが目立っていたので、少し鍛えなおして筋力が持ち直した。電車通勤だと合計すると1時間近くは歩いているが、テレワークや車の通勤ではほとんど歩かない。この差はかなり大きい。少しずつ、このような状況が把握されつつあるが、コロナが落ち着いたあと、国全体にボデーブローのように効いてくるかもしれない。

そして、現在のような受診控えは、医療機関の経営に大きな影響を与えている。もしかすると、医療供給体制が一気に崩れてしまうリスクさえある。水面下ではいろいろな動きがあるようだが、国の骨格に関わる医療問題について、もっと活発な議論が国会で行われることを望まずにはいられない。


編集部より:この記事は、医学者、中村祐輔氏のブログ「中村祐輔のこれでいいのか日本の医療」2020年8月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。