「佐藤栄作」越えの陰で。安倍総理は「宿題」を終えられるか

2020年08月24日 06:00

通算日数「桂太郎」越えに続く、連続在職日数記録。今回の「佐藤栄作」とは

佐藤栄作と安倍晋三(官邸HPより)

安倍晋三・内閣総理大臣の連続在職日数が8月23日で2798日となり、佐藤栄作・元総理(第61代~63代)の持つ7年8か月の戦後記録に並びました。そして24日はいよいよ記録更新となったわけですが、昨年の桂太郎・元総理(第11代、13代、15代)の通算在職日数(2887日)を破った際にもメディアが騒ぎ立てたのは「長期間で何をやったか」というお決まりの論調でした。

恐らくは今回の佐藤総理越えでも同じ反応が出るかと思われますが、政治家の評価というものは最後になってみないと実際のところは定まらない。そう私は見ています。

ならば佐藤総理の往時を振り返りながら、現在の安倍総理にとっての「宿題」はどうなるか。あるいはどうするかを占うのが今回の狙いです。

佐藤栄作総理を語る際のキーワードは幾つかありますが、代表的なものは何よりも「沖縄の返還」でありましょう。1972年(昭和47年)5月15日に沖縄(琉球諸島及び大東諸島)の施政権がアメリカからわが国に返還されたことは、サンフランシスコ講和会議で吉田茂内閣が果たした国際社会への復帰につづく一大事でした。文字通り「日本を取り戻す」を成し遂げたのが佐藤内閣であったと言っても差し支えないでしょう。

宜野湾市の市街地にある普天間基地(Inushita/写真AC)

その一方で沖縄をめぐる政治課題がすべて解決したかというとその答えは否で、今も続く普天間基地をめぐる一連の問題は、現在の安倍内閣に限らず歴代政権のすべてが顧みるべき宿題であることを思い知らされます。それゆえ私も、3月に出た『フテンマ戦記』(小川和久著、文藝春秋)には大いに注目しました。

今も出口の見えない普天間問題ですが、ようやくスタートラインに立つことができたのが佐藤内閣での沖縄返還でした。返還から2か月後の7月7日に佐藤は総理の職を辞し、後事は田中角栄・第64代総理に託されるわけですが、興味ぶかいのはそれまで過去最長の任期を誇った佐藤総理をしても「あれもこれも」とは行かなかった点です。そうした道半ばの想いは、さかのぼる事半年前の1月29日に行われた、第68回国会での施政方針演説(外交部分)にも垣間見えます。

施政方針演説に見る、佐藤総理の「道半ば」

その捉え方は読む人によってさまざまですが、私の場合は沖縄返還を前にした万感というよりも、どうしても道半ばの悔しさに思えてなりませんでした。演説の外交部分には、任期中に成し遂げられなかったいくつかの外交問題が並びます。

ひとつは中国との国交正常化であり、それは田中角栄内閣に引き継がれました。そしてもうひとつ、佐藤が並みならぬ意欲を燃やしていたのが北方領土の問題でした。

ニクソン大統領と会談する佐藤首相(1972年、Wikipedia)

演説の中で、佐藤総理は次のように語っています。

わたくしは,国際社会における戦後体制の推移を見きわめつつ,北方領土問題を解決して,日ソ平和条約を締結するために全力をあげる決意であります。さらに,通商関係の増進等,両国関係の発展に努めるとともに,安全操業をはじめ両国間の漁業に関する諸問題について引き続きソ連の理解と協力を求めてまいる所存であります。

いくら長期政権が追い風にあるとはいえ、あまりにも大きな政治課題を解決し、前進させるためには国民輿論(よろん)の喚起が欠かせません。北方領土問題の現状が物語るとおり、事態は残念ながら進んでいません。それだけに、今や連続在職期間においても通算期間においても最長となった安倍内閣を勿体なく思います。

国民の1人としても後押しできなかった申し訳なさを感じつつも、それ以上に政治を停滞させたビジネス野党、それを面白おかしく報じ続けたメディア、また与党においても国事を忘れて私利私欲にまみれた悪党議員の面々。それぞれを恨めしく思います。

別に現政権の肩を持ちたいわけではありません。ただ、時の内閣が成果を出せないということは、国民にとっても成果が得られなかったという事なのです。その点を私たちは冷静に振り返る必要があります。

ならば、どうするか。もしも私たち一人ひとりが総理なら

ふたつの大記録を更新した安倍総理ですが、先日の検診休暇以降、「安倍内閣の後」をめぐる憶測がにぎやかになってきました。

安倍総理をしてもまだ破られていない、佐藤総理の記録が実はもう一つあります。

2017年(平成29年)3月5日の自民党大会で党則改正が行われ、総裁の任期はそれまでの2期6年から3期9年に延長されました。佐藤栄作総裁は旧党則の下、結党以来唯一の4選を果たしています。それゆえこれまでの超長期政権を維持できたわけですが、昨今の趨勢からみても安倍総裁の4選を可能とする改正は行われないでしょう。

自民党大会で演説する安倍氏(党サイトより)

現在の3期目は2018年9月にスタートしているので、任期は2021年9月まで、ちょうど残り1年です。もしも衆議院がこのまま解散されなければ翌月10月には任期満了に伴う総選挙も実施されるため、いずれにしても最終コーナーが見えてきた形になります。

もしも読者の皆さんが総理、総裁の立場ならば、残された時間で何に全力投球できるでしょうか。無理矢理1年の延期となっているオリンピックか、それとも現在進行形の新型コロナの収束か。疲弊しきっている経済か。

あるいは未だ筋道の見えない北方領土問題や沖縄の普天間基地問題か。先日亡くなられた横田滋さんの無念にも報いることはできるのか。めぐみさんや、幾多の同胞を取りもどすことはできるのか。

残された時間は僅かです。だからこそ、安倍総理にも私たちにも「選択と集中」が求められます。

自分の代では、少なくとも何に対して決着を図るのか。そして何を最優先課題として後事に託すのか。

安倍総理の宿題は、私たちにとっての宿題でもあります。

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