独走するPCR検査「世田谷モデル」は謎だらけ。「順繰り検査」とは…

こんにちは、音喜多駿(参議院議員 / 東京都選出)です。

地方自治の原則があるとはいえ、「財源は国や都にも強力を求めたい」と区長がおっしゃっている以上、こちらの政策については疑問を呈さざるを得ません。

世田谷区の保坂区長(区公式YouTubeより編集部引用)

【独自】世田谷区の保育士ら2万人、一斉PCR検査へ…症状の有無問わず(読売新聞オンライン)

「誰でもいつでも何度でも」

とぶちあげて始まろうとしているPCR検査の「世田谷モデル」ですが、その第一弾の概要が明らかになりつつあります。

世田谷区内の保育士や介護士などの「エッセンシャルワーカー」約2万人を対象に、4億円の予算を使って一斉検査をすすめるという計画ですが、いくつもの「?」が浮かんできます。

端的に申し上げて、費用に合うほどの効果が見込めない、というよりデメリットのほうが大きいのではないかと思えてなりません。


エッセンシャルワーカーに検査をするというのは一見すると良いことに見えますが、そこを起点とする市中感染を抑えるという目的であれば、かなりの頻度で定期的にやらなければ意味がありません


あるいは市中の感染状況を把握するのだとすれば、ランダムサンプルで文字通り「一斉に」行わなければ、やはり意味のあるデータは取れません

現状の計画の通り「2ヶ月かけて」「1回だけ」やるのでは、「私は宣言通り、頑張ってやりました!」という区長の実績作りで(4億円をかけて!)終わる可能性が高いと考えられます。

そしてこの「一斉検査」が行われるデメリットですが…対象の保育士・介護士に陽性者が出た「後」の対応が、どこまでリアルにシュミレーションされているのでしょうか?

この一斉検査で無症状者から一定の陽性者が発見されれば、その職場では多数の「濃厚接触者」とともに出勤が停止されます。

その人的資源が止まった保育・介護の現場を支えるだけの人材を世田谷区が手当できるのでしょうか。

陽性者を見つけたら現場が止まるから、「臭いものにフタをしておけ」というわけではありません。しかし一方で、検査には必ず偽陽性・偽陰性の問題がつきまといます。

そうした中で、あえて無症状者まで対象にしてPCR検査を施すのなら、「事後」の対応を整えて実施するのが最低限の責任ではないでしょうか。

地方が独自の施策で国や広域自治体を引っ張り、先例を作る。それは素晴らしいことである反面、その地域で責任をもって完結できる体制を整えるか、きちんと関係各所と連携を取っておくことが前提だと思います。

加えて検査方法についても指摘が入っており、この点も大丈夫なんでしょうか…。

こうした不安な動きが都内で生じている一方で、少し明るめ(?)のニュースもあります。

これまでたびたび指摘・提案をしてきた新型コロナの「指定感染症」に対する扱いが、とうとう検討の遡上にのりました。日本の行政は動き出すまでは遅いですが、このステージからはトントン拍子に進む場合もままあること。

決してコロナを甘く見るわけではなく、PCR検査を拡大し一人でも多くの方を救うためには、感染症法上の措置・運用の変更がまずボーリングのセンターピンです。

こちらの議論に注視するとともに、事態が動き出すように引き続き建設的な提案を続けてまいります。

それでは、また明日。


編集部より:この記事は、参議院議員、音喜多駿氏(東京選挙区、日本維新の会)のブログ2020年8月24日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は音喜多駿ブログをご覧ください。