今、変わらないでいつ変わるのか?経営者に問われる発想の転換

先日、日経が主催するウェビナーに参加しました。題して「いま、経営者に求められる覚悟とは ~進化し続けるビジネスリーダーに聞く~」でメインゲストにアイリスオーヤマの大山健太郎会長、ほかにアパレルのTSIホールディングスの上田谷 真一社長と東大大学院教授の森川 博之氏という顔ぶれでした。

三人が異口同音に述べたのは「今、変わらないでいつ変わる?」であります。

コロナ禍となってから早6カ月が過ぎようとしています。この間、世界の歴史に残る感染症の蔓延、経済と社会の停滞、人々の行動規範の変化が起きつつあり、今もその先行きは十分見通せているとは言えません。4-6月の決算を見ると赤字転落、下がっているけれどかろうじて黒字、一方で前年比3-5割増や最高益などと今までとは違うタイプの温度差が生じています。下り坂業界の背中を強く下押しした感もあります。

コロナが地球上のほぼすべての人々に影響したとすれば地域格差はありません。ここで小さく守りに徹するのか、社会観の変化に対応して会社経営の舵を大きく切るのか、天下分け目の大きな岐路にあります。6カ月たった今、ようやく気がつき、動き始めた会社もあるでしょう。一方で、もっと早く、それこそ3月頃から見通した会社もあるし、未だに何も手を打っていない会社もあるでしょう。

fujiwara/写真AC

「同じものは返ってこない」。多くの経営者はこのように語ります。とすれば座して待っていても以前のようなビジネスはなんら期待できないと考えるべきなのでしょう。

大山会長の話はさすが経営者の年輪を感じさせたのですが、同社は変われる会社だということ、そして変わるには常に余力を持たせておくことだと述べています。確かに同社はガーデニング用品からスタートし、ベッドや収納家具、家電と変化する中で顧客目線でこんなものがあったら面白いというものを次々開発してきました。私もアイリスオーヤマの製品はたくさん購入させて頂いています。特に人感センサーのついたエアコンはシェアハウスでつけっぱなしの無駄を省く点で電気代に明白な違いが出ました。

変われるためには余裕があることが重要です。私が8割のチカラで残りは自分を切磋琢磨させるための使おうと考えている点、あるいは資金的に何かあればすぐに出動できる体制を取っておくことは私の長い経営者人生でも体得したもののひとつです。

かつて、経営体力の120%で仕事をしていた時、想定外の事態が起き、資金繰りが非常に苦しくなり、綱渡りどころか、細い紐を渡らざるを得ない事態になったことは私のその後の経営スタイルに大きな変革をもたらせました。

アイリスオーヤマが大きく伸びた点はもう一つ、DtoCの草分け的存在である点でしょう。製造者が顧客に直接販売する仕組みはそれまでのなかったわけではありませんが、ここまで大きくしたのはご立派です。これは顧客の声が製造者に直接反映されるし中間業者もない点で圧倒的に優れたビジネスモデルなのです。

次にこのセミナーで登壇者が皆、口をそろえていったのがDXとCXであります。DXとはデジタルトランスフォーメーション、CXはカスタマーエクスペリエンスです。それぞれ比較的近年の経営の考え方ですが、我々は誰にどうやって製品やサービスをお届けするのか、その間に無駄や管理上の不行き届きが起きる部分はないのか、ずっと考えるわけです。そうするとビジネスモデルは5年ぐらいでどんどん変わらなくてはいけないことに気がつくでしょう。もしも120%で動いていたら新たな投資余力もありません。人は移り気で世の中のトレンドは天気のように変化します。

コロナは更にその背中を押したわけで地球儀規模で突然大変革が起きたのです。とすれば今から私たちがやらねばならないことは元に戻すことではなく、ベストソリューションを見つけ出すことであり、当然、それは今までとは違った結果を生み出すだろうということです。そしてその答えは誰も持っていません。自分の頭で考えよ、です。今は経済や社会が変革期にあるので考えを実行しなければ死んでしまうだけなのです。恐ろしい世界です。

ではどうやったら考えが浮かぶのでしょうか?それは日ごろから様々な分野に広く興味を持ち続けることではないかと思います。自分の専門領域だけをやっていてはダメなのです。私も先日、AIの専門家と1時間ほど非常に有意義な時間を過ごしました。違う世界に生きる人たちの価値観、そして全然違う世界と自分の世界があるところで接点が生まれるかもしれない突飛なアイディアをぶつけ、想像力を膨らませるのです。私の脳からアドレナリンが溢れ出るのです。

経営者や経営者を目指す人は常に刺激を受け続ける、そしてメリハリあるライフの中でこそ、発想の転換が図れると思います。枠組みから飛び出せ、これがこれからの勝ち組のキーワードになると思います。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年8月25日の記事より転載させていただきました。