書評:楠木建著「ストーリーとしての競争戦略」

友人に勧められて、楠木建・一橋ビジネススクール教授の『ストーリーとしての競争戦略』を拝読。

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スターバックスコーヒー、サウスウェストコーヒー、ガリバー、アマゾン、ブックオフ等の企業の例を分かりやすく示しながら、ストーリーとしての競争戦略の重要性を強調する。

ストーリーから切り離してそれだけを見ると、競合他社の目では「非合理」で「やるべきではないこと」のように見えるが、ストーリー全体の中に位置づければ、強力な合理性の中核にある「クリティカル・コア」こそが、他社がマネをしようとせず、競争優位の持続性の源泉となりうるという。

例えば、スターバックスの直営店方式。フランチャイズ方式の方が出店速度は当然早まるが、「第三の場所」というコンセプトを実現するためには、立地、座席数、滞在時間やコーヒーを提供する時間などが重要であり、一見非合理な直営店方式でなければコンセプトが崩れてしまうという。

また、「第三の場所」のコンセプトを徹底するため、スターバックスでは、短期的には利益を得やすいお酒や軽食等の提供も控えている。シナジーは、ストーリーと結びついてこそが意味があるという。

そして、ガリバーの前進の日本流通などの例に挙げながら、事前にストーリーが描かれているからこそ、「早く」「小さく」「はっきりと」失敗することができると主張する。

分厚い本だが、なるほど!とすぐに読める本。お勧めです。


編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2020年8月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。