アメリカの大統領選に関する報道には左派的傾向の強いメディア記事が目立ちます。フィナンシャルタイムズやエコノミストはバイデン大統領の時代を既に織り込んだ記事を放っており、メディアによる思想戦略が進んできているように見えます。
バイデン氏の外交戦略は協調型で独自色は封印する発想です。では協調型とはどこまでを言うのか、例えばオバマ前大統領が生み出したG20型でより地球上を広く網羅するような対話を考えているのか、はたまたG7やファイブアイズといった「親友」との枠組みをより強化したいのか、ここはまだ不明瞭です。
オバマ氏のG20に成果があったかといえば2割の成果と8割の混沌を生み出したとみています。そもそも国家の発展途上具合が違う国々が一堂に集まり利害の話をしてもまとまらないのは国連の機能不全状態をみれば一目瞭然であります。戦前にあった国際連盟が同様に機能する部分より弊害が多く第二次世界大戦後、解散したのは意思疎通と意思決定は違うのであり、理念と現実に違いがあることは十分にわかっていたはずです。
経済でも政治でもスポーツでも社会でも基本はリーダーやリーダーグループが先頭を引っ張り、第二、第三集団がそれに引っ張られるように発展していくのがもっとも効率的で早い展開が期待できます。そのリーダーグループは経験則からは5つ前後がベストマッチと考えています。それ以上多くても割れるし、少なくても運営上難しいものです。
アメリカは大統領選挙を通じて二大政党によるバランス政治が長年行われており、日本で経験したような時折起こる「政権交代」で日々の暮らしは180度方向転換が起き、時としてそれは機能し、時として混乱を招きます。一般的に民主党政権はバラマキ型政権であり、マイノリティを含めた多くの利害関係の改善し、住みやすい世界を作るのを得手としています。しかし、そこには多大なる財政支出を要するため、コロナでただでさえ傷んだ懐をどう回復させるのか、理念と現実の問題はすぐ眼先に迫ってきているのであります。
一方の日本。アメリカの大統領が8年までなら安倍首相の任期も程よい賞味期限を迎えたという論調がありますが、ある意味正しいと考えています。大企業のトップは4-8年ぐらいの在任期間ですが、なぜ、そのぐらいかといえば時代の変化に対する感性と情熱を注ぎ込める限界があると同時に人は歳を取る、邪念が入るといった煩悩に悩まされるからであります。4選というご意見もありますが、ただでさえハードな総理の仕事をさほど長期に務めるのは気力も体力的にも厳しいのではないかと考えています。
日本人は比較的コンサバであります。ずっと変わらないでほしいと思う人が他国に比べて多いと思われますが、日本が島国で安泰としていた時代はとうに過ぎました。とすれば安倍政権を通じて守ってきた保守と訪日外国人や外国人労働者にみられる開国する部分のバランス感覚を持ち合わせている人が望まれます。
最近は英語ができる政治家も増えてきましたが、英語をしゃべるのは道具であって国際スタンダードを理解してコミュニケーションができるかが最も重要なところです。個人的には次期トップを選ぶうえで最重要なポイントの一つと考えます。安倍首相が民主党政権で落ち込んだ経済を復興させる「経済の安倍」を売りにしましたが、次期首相はいわゆる「国際派」がキーになると考えています。
日本がトランプのアメリカとあと4年半付き合うのか、バイデンのアメリカと付き合うのか、を考えたとき、どちらが大統領になっても絶対不可欠なのはグローバルな視点に立ち、論理性をもって世界のトップを説得し、共鳴を得らえるか、であります。東アジアと日本の関係をどう築くかは二国間だけをみていては見誤ります。相手国やそのライバル、同盟国との連携ぶりを含めて俯瞰し、中期的戦略に立てるか、であります。
私の見立ては中期的に朝鮮半島はより左翼化し、中国との連携が密接になるとみています。中国の野望は半島を絶対に自国には組み入れずに(歴史的にも一度もそうしていません)一方でかつてのような服従の同盟関係を築いていくとみています。
明治時代以降、日本が朝鮮半島政策を推し進めたのはロシアの南下政策を恐れたからでした。中国が半島の服従関係の構築をなし得た場合、日本は中国の膨張政策を阻止する防戦が重要な課題になってきます。アメリカは日本、台湾、フィリピンとのタイアップをより強化せざるを得ないでしょう。韓国との疎遠感は引き続き、継続するとみています。
その場合、日本が中国の影響を受けない政策と対策の強化は絶対不可欠になります。TikTokやファーウェイの情報漏洩が問題されていますが、日本はスパイ天国と同時にマインドコントロールされやすい傾向があります。小銭をつかまされて重要な情報をすぐに出してしまいます。
今、我々は何を守らねばならないのでしょうか?日米政局が揺れる中、東アジアは虎視眈々と次のステップの戦略を進めているという現実に目を向けるべきでしょう。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年8月26日の記事より転載させていただきました。