学歴と年齢は「仕事の能力」に関係するのか?

かつて国内外の金融機関で仕事をしていた時、チームメンバーの採用をする機会がありました。志願者の送ってきた履歴書を見て、面接をして最終判断をするのですが、仕事を一緒にする前に、年齢や学歴、職務経験といった「スペック」から評価をすることになります。

(写真AC:編集部)

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そこで疑問に思うのは、学歴や年齢から、仕事の能力を判断することは可能かということです。

資産デザイン研究所を設立して、様々な分野の人と一緒に仕事をする機会がありますが、彼らの学歴を私はほとんど知りませんし、こちらから聞くこともありません。また年齢に関しても、何となくはわかりますが、何歳なのか正確には知りません。もしかしたら、想像以上に若かったり、年配の方だったりするのかもしれません。

私は今の仕事をする上で、学歴や年齢は業務能力の評価の指標として、ほとんど役に立たないと考えています。

そもそも、高い仕事の成果を上げるのに必要な能力は、仕事の内容によって異なってきます。

例えば、営業の仕事であれば、相手とのコミュニケーション能力が重要です。第一印象を良くして、相手の懐に入って、信頼関係を築く。そして、強引に営業するのではなく、相手にメリットを理解・納得してもらって成果につなげていく。

あるいは、事務管理の仕事であれば、納期を守る、ミスのない仕事をするといった基本を守ることで、評価を高めることができます。さらに、業務内容を工夫することで作業量の削減を実現できたりすれば、高い評価を得られます。

これらの実績を出すためには、有名大学を卒業する必要もないし、年齢が若ければ良いというものでも無いのです。

むしろ、高学歴の人の方がコミュニケーション能力に問題があったり、若手よりもシニアの方が仕事が丁寧で評価が高いということも、珍しくありません。

金融機関では、未だに「スペック」による評価で採用を行っているのでしょうか。

金融の仕事だけが、学歴や年齢によって能力が判断できる特別な仕事とは思えません。もし、金融機関が私がいた頃と同じような採用方法を続けているとしたら、スペックには劣るものの能力のある人材を見逃し、スペックだけがピカピカの割高な人材を採用してしまっている可能性があると思います。

間違えた採用をする会社があればあるほど、労働マーケットに「歪み」が生じて、優秀な人材を獲得できる。これは当社にとっては、とてもありがたいことです。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年8月27日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。