疑問だが、40代50代の知識人やマスコミ・ジャーナリスト、上場企業役員やビジネスコンサルタント・シンクタンク、大学教授准教授、上級国家公務員、主要士業、政治家等何らかの権力を持ち、今後の日本に影響力があるとされる方々は、一体どれだけの人が雑談レベルで英語を話すのだろうか?
英語で雑談とは
ここでいう雑談とは、世界各国の同年代同レベル職の人たちと、初対面でも雑談で無難に言葉のキャッチボールができるレベルをいう。いわゆる英会話レベルではない。「仕事上のメール交換はできます」レベルでもない。一方的なプレゼンテーションなら、英語で話せますレベルもでない。ただ海外に留学したことがある、在住・勤務したことがある、外資系企業に勤めていたことがある、でもない。世界各国の同年代同レベル職の人たちが、例えば何かのカンファレンス後のパーティーで雑談をしている集団の中に入り、空気を読んで意見を話し、存在を示せる程度だ。
世界の人口の2割が英語を話す時代
なぜ「英語で」かといえば、いまだ英語をアメリカの言語という人がいて驚くが、今や英語は、International English、Global English と呼ばれ、世界の共通コミュニケーション言語だからだ。
Babbel MagazineのHow Many People Speak English, And Where Is It Spoken?によれば、現在世界の人口約75億人の約2割、15億人が英語を話す。うちネイティブが3億6千万人。残りは第2言語以下だ。ネイティブ人口でいえば、Wikipediaによれば中国語が9億2千万人とトップだが、英語は、第2言語以下として話す人がネイティブの倍以上に多い。どこの国の人たちが英語を話すかはWikipedia のList of countries by English-speaking populationによると、世界196ケ国 中126 ケ国が紹介されている。ところがここには日本も韓国も入っていない。日本人のように教育は受けて片言で最低限の意思疎通ができる層を含めれば、恐らく世界の潜在英語人口ははるかに多いはずだ。
誰が第二言語として英語を話すのか
ここで問題は、英語ネイティブではない国で、誰が英語を話すかだ。答えは簡単だ。 きちんとした英語を話すのは高学歴で高い教養を持つ層だ。
世界の誰にとっても、外国語を習得して他言語他文化の人たちとコミュニケーションができることで得るメリットは大きい。
1. 自分の視野を広げられる。
2. 自分の考えを支える基礎世界観が広がる。
3. 自分の問題解決に客観視点を得られる。
4. 自分の言葉で外国に発言ができる。
更に自分と違う文化の人たちとの議論は、新たなアイデアやイノベーションの源泉だ。
それが今や世界共通言語の英語を一つ身につけるだけで、一国二国ではなく、ほぼ世界中の人種、民族、文化、宗教、社会の人と直接コミュニケーションができるのだから、得られる効果の大きさは、他言語の100倍以上なのだ。だから今やどこの国もエリートキャリアを志す人たちは、英語ネイティブでなければ英語を習得し、英語ネイティブも非ネイティブも、英語を共通言語に学生時代からインターナショナルな交友作りに熱心だ。
また年齢でいえば現在の40代−50代以下は英語を話す。英語共通言語化の背景には、1989年の東西冷戦終結で、東ヨーロッパ諸国の第二外国語がロシア語から英語にシフトし、人の往来も盛んになったこと。そして1990年代後半からのインターネットの発達がある。だから1990年代後半にまだ学習意欲が高い年齢だった世代以降は、英語を話す割合が高まる。
世界中の人たちが雑談議論をしている
英語という共通言語を得て、近年世界各国の様々なレベルの人たちの間で、雑談や議論が盛んだ。なにしろトランプのアメリカ、ブレグジットのイギリス・・20世紀主要先進国をはじめ世界中どの国も、政治経済が問題だらけだ。
私が3年ほど前にスイスで、スイス、アメリカ、イギリス、ドイツ、イタリア人の友人たちと一緒に休暇を示し合わせて落ち合った時、友人の一人が叫んだものだった。「ちょっと待て。この中でうちの国マジて終わってる状態でないのがスイスだけってどういうこと?」
更に気候温暖化、廃プラの海洋汚染問題、ヴィーガンの高まり。加えてパンデミック。2015年9月に国連サミットで採択されたSDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」は、「17の目標」と「169のターゲット(具体目標)」で構成された広範囲なものだが、このSDGsはトップダウンではなく、世界中の良識ある人たちがこのままでは人類が滅びると危機感を持って議論を続けてきたテーマの集結だ。
それでも足りないとグレタ・トゥーンベリは国連気候アクション・サミット2019で怒り、彼女だけではないとダボス会議2020では、10人の10代環境アクティビストが堂々と英語でスピーチをした。ちなみにこの10 人の国籍は、スウェーデン、インドネシア 、アイルランド、カナダの原住民、南アフリカ、ニュージーランド、プエルトリコ、シリア、アメリカ、ザンビア だ。
日本でも知られているダボス会議は、世界のトップリーダーが一堂に会し、世界が直面する重大な問題について議論をするための会議であり、2020年は世界118カ国から2800人が集まった。開催国スイスは英語ネイティブではないが議論は当然に英語だ。
そもそも現在世界ではダボスに招待されるスーパーエリートでなくとも、インターネットやSNS、ZOOMを活用して、誰でも気軽にインターナショナルなメンバーで雑談議論ができる。特に新型コロナ以降は、仕事が忙しいエリートでもロックダウンで時間ができ、ZOOM雑談議論が更に加速している。
世界のどこの国でも、あらゆる層の人たちが、インターナショナルな議論から活路となる新しいアイディアを見つけようと、血眼なのだ。
世界の皆が議論している中に日本人がいない問題
そこで冒頭の質問だが、この現在の混乱した世界で各国の40代50代エリートたちがオンにオフに雑談議論する中に、どれだけの40代50代日本人が入っているだろうか?
私がこの疑問を口にする理由は、日本の40代50代高学歴高キャリアの話す内容が、世界の同世代同程度エリート達の人たちが話す内容とあまりに違うからだ。
この年代でこのクラスは、どこの国でも地味に社会経済への影響を持つ。世界中の実務者はお互いに雑談をしていて、日本人の同年齢同クラスは入っていない。この状態は問題だ。
例えば、
1. SDGsのような国際機関の決定は、従わなければいけない。けれどもその議題程案と意思決定に至る雑談には、日本の意見が全く入らない。
2. 例えば現在世界各国のビジネスパーソンが今やヴィーガンミレニアムの理解なしにビジネスができないと言っている中で、日本だけその空気が読めない。これでどうやって世界に通用するサービスができるのか。
3. 技術発達も近年のイノベーションは世界中で協力し合い、トライアンドエラーのエラーリスクを分散させているが、日本だけそれを共有できない。これでどうやって技術先進国に復活できるのか。
そこでご提案だが、社会に責任を持つ40代50代で仕事意欲がある方は、もっと英語でインターナショナルな雑談に参加されてはいかがか?
出来なければ資質を問われても仕方がないですね。世界の人口の2割の人たちの議論にも入れない世界観が狭く自分の問題解決もできない弱虫が、問題だらけの日本の問題をどうやって解決できるのか?と。