安倍総理大臣が退陣を表明した。これに対して、毎日新聞は「民主主義ゆがめた」と書き、朝日新聞も「安倍政治」の弊害を清算する時だいう。これら社説は批判ばかりで評価の言葉はない。しかし、マイナンバーは間違いなく安倍政権の功績である。
自民党政権は1970年前後に国民総背番号制の導入を目指したが、メディアや野党の反対で頓挫した。1972年11月16日の毎日新聞には「国民総背番号制に反対しプライバシーを守る中央会議」が組織されたとの記事が出ている。
その後は、年金番号、健康保険被保険者番号、パスポート番号、納税者番号、運転免許証番号、住民票コード、雇用保険被保険者番号などを、各行政機関が個別に番号付けしてきた。
それが「消えた年金問題」を引き起こす。
年金の納付記録を手繰り寄せようとしても、カタカナ表記の氏名しかないし、転職する毎に新たな年金番号が付与されていたので、記録の集約には限界があった。その結果、納付記録がすっぽり消え落ちた人の年金が「消えた」のである。
消えた年金は国民の怒りを買い、自由民主党から民主党に政権が交代した。
再発防止のために、2011年に民主党政権は「社会保障・税番号大綱」を決定し、2012年に関連法案を提出した。その直後に自由民主党に政権が戻り、第二次安倍政権が誕生した。そして、2013年に安倍政権は民主党案ベースの関連法案を再度提出・成立させた。これがマイナンバー法である。
成立を優先して民主党案を採用したため、マイナンバーには利用事務が限定されている欠点がある。しかし、社会保障・税・災害対策の3分野とはいえ、複数の機関に存在する個人の情報が同一人の情報であることを確認する手段が誕生したことで、電子行政が前に進んだ。今では、健康保険証・運転免許証にもマイナンバーカードを利用する方向で検討が進んでいる。
先日の会見で江川紹子さんが電子行政に関連する質問をした。
これに対して安倍総理大臣は、「役所ごとにシステムが違うという問題もございますし、自治体ごとに違っているという、そういう課題もあります。」「個人情報に対する保護、この対応が自治体ごとに違うという課題もあります。」としたうえで、「今回、そういう課題が明らかになってまいりましたので、高市大臣を中心に一気に進めていくということにしているところでございます。」「私は辞めていくことになるわけでありますが、残りの期間、また次のリーダーも当然取り組んでいかれると思いますが、私も残余の期間、しっかりと頑張っていきたいと思っております。」と回答した。
安倍総理大臣はマイナンバーを実現しただけでなく、現行の電子行政の課題を認識し、個人情報保護条例2000個問題の改善にも動いていた。
この7年余り、電子行政をけん引してきた安倍総理に心から感謝し、後任にも電子行政のいっそうの推進を期待したい。