新築マンション、このご時世にバブル超え

コロナショックで景気が悪くなり先行きが不透明なのにもかかわらず、意外にもマンションの販売が好調だというんです。不動産経済研究所が20日に発表した7月の首都圏(東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県)の新築マンションの発売戸数は、前年同月比で7.8%増、11ヶ月ぶりに前年実績を超えたということです。

11ヶ月ぶりすなわち、前年を上回るのは昨年の8月以来ということになるわけですが、昨年の10月には消費税が上がりましたから、それ以降の購入が鈍っていたということはこれ想像できますね。そして今年になってからはコロナですから、外出自粛ということにともない物件を見に行ったりできず、当然購入に繋がりませんでした。一方で、「そろそろ買おうかな」と購入意欲があった人はその自粛期間中にネットなどで調べて、外出自粛が解除になった7月になって内覧に行き、購入につながった。いわば自粛の反動とも言えます。

面白いのは、マンション需要の中身に変化が出てきているということだそうです。購入をするとなれば、人によって重視する点が様々あると思いますが、最寄の駅との距離や職場との距離を重視する人が減りました。その一方で、なるべく広い物件を重視する人が増えています。これはやはり、テレワークと大いに関係がありそうですね。テレワークが主体になると通勤回数が減りますから、駅の優先順位が下がる。一方で巣篭もりをして「今のところ狭いな、もう少し今より広いところ」という意向です。

それでも駅近というのはやはり資産価値が落ちにくいということで人気は根強いそうで、以前だったら駅から徒歩10分というのが一つの目安でしたが、最近では徒歩7分以内が人気になっているそうです。

では、価格はどうなっているか。こちらも首都圏のデータですけれども、昨年の新築分譲マンション1戸当たりの平均価格は5980万円で、一昨年に比べて1.9%上昇しています。1平米当たりでは87.9万円で一昨年に比べて1.2%増加しています。過去10年で一番安かったのが今から8年前の平成24年(2012年)、この年と比べると価格が1.3倍、平米当たりは1.4倍に値上がりしています。今のお話ししたのは昨年の価格です。では、今年の価格がどうなってるかと言うと、今年上半期はさらに上がって、1戸当たりの平均価格は6668万円、平米当たり103.1万円になっています。今年の上半期といえば、まさにコロナ渦です。

そうなんです。コロナの自粛期間中、マンション価格は着々と上がっていたということで、今年と昨年を比べてみると700万円近く値上がっているのでびっくりしちゃいます。さらに平成3年を超えて最高値となり、バブルのときより高いことを意味します。ですから、景気が悪くなれば不動産価格が下がるのか、それはそうも簡単な図式じゃないようなんです。今年上半期の値段が上がっているのもそうですけれども、新築マンションはその資材と人件費の高騰があると値下がりせず、むしろ、それを上乗せして販売するということになります。

資材の価格は国際水準なので世界の景気が良くなってきて、資材も上がったということです。また、マンション開発供給における大手企業の割合が高まったということで、企業体力があるから少々売れなくても値引きしないで抱え込むので、投げ売りが生じにくくなったと言うのもあるそうです。さらには金融緩和によって金利安で融資も受けやすく、税制上の優遇もあるということです。

一方で、コロナで景気低迷となれば、企業倒産、失業者が増えるということになってその場合はやはり不動産取引は少なくなるとみられます。ただ不動産価格の変化というのは、株価や景気の低迷に数年遅れてやってくるというのがこれまでの歴史ですから今の段階では、まだまだこの先どうなるかはわかりません。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年9月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。