アメリカの株式市場の上昇ぶりにもはやだれもついていけない状態になっています。ハイテク銘柄の多いナスダックをはじめ、ダウ、S&Pともに3月初旬のコロナによる売りたたきが幻のようです。今日は一転して大きく売られていますが、一体、この暴走機関車はどうなるのでしょうか?
私は以前7月ぐらいまでは安泰、そのあとは大統領選挙の動向次第で厳しくなると予想していました。ところが8月もずっと安泰でした。一部専門家の予想では9月こそ足踏みをするぞと言われていますが、今日の動きはその前哨戦とみるべきでしょうか?
ご承知の通り、私も北米市場で小さくない金額を運用していますが、この2カ月間、少しずつアメリカ市場の銘柄は売ってきました。計画ではもう少し売り、カナダの株式に乗り換えるか、現金で保持するか、考えています。
ナスダック市場にみられる株価の暴騰はいったい何なのか、であります。私はナスダック銘柄は今、一つも持っていません。それは2000年代初頭のUSのITバブル崩壊が頭に浮かぶからなのです。あの頃、こぞってハイテク株に投資した人は「夢を買うんだ。指標やバリュエーションなんて関係ないさ」と強気一辺倒の発言でしたが、その後襲った崩落で生活そのものが奈落の底に落ちてしまった方も多かったはずです。指標で見る場合、バリュー株は手堅さの反面、グロース株は夢を買う部分があるため、ナスダック銘柄の株価は時として全く論理性がないことが起きるのです。
アップルやテスラの株価を見ているとゴムまり状態です。これだけの大型どころか巨大株が1日にして5%、10%ポンポン動くのはそれだけ資金運用に困っている人たちが消極的選択として選んでいるとしか思えないのです。数日前、Zoom株が一日で50%も上がりましたが、もはや、開いた口が塞がらないというものです。事実、アメリカの株なら何でも上がっているわけではなく、上昇したのは指標採用銘柄であったり、材料株であったりしますが、REITなんてちっとも上がらないし、金融も消費財もいうほど上がったわけではなく、ここから更に買いあがるのはロシアンルーレット状態であります。
実はカナダの投資家にとってはアメリカ市場で高配当銘柄への投資にメリットが少なくなるケースがあります。それは配当に対する源泉税が15%から30%に引き上げられたからです。例えばある銘柄の配当が100ドルあったとすれば実際に手元にはそれまでの85ドルから70ドルに減額され、アメリカの税務当局が30%を源泉してしまいます。それを取り返す方法は確定申告で納税のポジションならば相殺できるのですが、今年のようにコロナで大打撃を負った法人や個人が税務上の損失を使って納税をしない場合、源泉税を取り戻す手段がないのであります。
私は先日のブログで日米欧が限りなく金利を引き下げていることが罪であるという趣旨のことを書きました。この5-6年、金利引き下げで対応しきれないので中央銀行が更に資産を買うという手段に出てしまいました。それ故、例えば3月末で日銀が10%以上の株式を持つのはアドバンテスト、ファーストリテイリングなど56銘柄にも及び、上場投資信託(ETF)を通じた保有残高は31兆円にもなるのです。日本のビジネスそのものを日銀が買い上げる実質的な財政ファイナンス状態といってよいでしょう。
低金利化は格差を広げる手段だというのは結局、投資という選択肢を持っている人だけにメリットが生まれ日々の生活に窮している人にはほぼメリットはありません。今は企業が設備投資をして、利益が出て株価が上がっているという企業側の論理よりも、投資先の欠如から資金を持つ者がその運用、投機先として買手の論理で株式ゲームが展開されているといってよいと思います。
かといって中央銀行が持てる資産の売却を行うかと言えばそれはありません。行き過ぎの株式市場を冷却するために金利を上げるわけにもいきません。私から見れば暴走機関車が止まりにくい状態になっており、いつか投資家たちが逆回転の道を自分で選ぶ時が来るだろうとみていました。ショート筋は虎視眈々とそのチャンスを覗っていますが、大統領選挙のある11月までは大崩れしないとみていました。これは外れるかもしれません。
ロシアンルーレットゲームでも日計り、つまりデイトレならよいのですが、今や翌日に持ち越すことがリスクになりつつある気がしてなりません。私も暇ならデイトレできるのですが、残念ながら私の本望ではないし、それが健全だとは思いません。さてさて春に続き秋の乱があるのでしょうか?しばし乱高下が続く相場展開がありえそうです。
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年9月4日の記事より転載させていただきました。