東京都9月補正予算は未来を見すえているのか

奥澤 高広

こんにちは、東京都議会議員(町田市選出)
無所属 東京みらい おくざわ高広です。

さて、9月4日発表されましたが、東京都では新型コロナ対策の補正予算が組まれます

今回の3,413億円を加えると、これまでに約1.6兆円の新型コロナ対策をうってきたことになります。

その内訳は、

1.感染拡大を阻止する取組 882億円

医療機関への支援や機器の購入、保健所の体制強化に加え、インフルエンザの流行期に備えた予防接種の補助や高齢者・障害者施設へのスクリーニング検査など重症化リスクの高い方々への予防的な対策が盛り込まれており、妥当であると考えます。

東京都版CDCは、中身がいまだ見えず、コメントのしようもない状況ですが。。。

また、斉藤れいな議員がブログで書いているように、求めてきたトレーサー班の設置をはじめとする取組は歓迎すべきものです。

トレーサー班の設置が決定!本日から人材募集開始です

一方で、この後に述べる予算については不安がないと言えばうそになります。

2.経済活動と都民生活を支えるセーフティネットの強化・充実 1,740億円

制度融資というのは、事業者の資金繰りを助けるために、一定期間無利子(低利子)・無担保で貸し出すものですが、その利子や信用保証料は都が肩代わりする形になります。

私が不安に思っているのは、この財源に「都債」をあてることになったことです。

都債といえば、先の知事選で山本太郎候補が都債を15兆円発行するとぶちあげて、注目を浴びましたが、一言で言えば、都の借金です。

例えばハード整備などの将来世代と税負担を分け合うべきものや今回のように将来返ってくる見込みのある事業に発行することができます。

しかし、果たして、この融資は返ってくる見込みがあるのでしょうか。通常時の制度融資については、返済率がとても低いという話を聞いたことがあります。たしかに、現在の苦しい経営を強いられている事業者を救うためには必要な施策かもしれません。

しかし、それが将来にわたってのツケになる可能性も含めて、判断を下さなければなりません。

3.感染防止と経済社会活動の両立を図る取組 87億円

ここには記載されていませんが、感染防止ガイドラインに沿った対策を行うための補助金が大半(82億円)を占めています。これは、アクリルパネルの設置費用などを対象としていて、例えばオンライン学習塾などの非接触型モデルへの転換は含まれていないそうです。

私は、東京都の対策が「感染拡大防止ステッカー」に引っ張られすぎていることを懸念しています。確かに感染拡大防止ガイドラインを遵守すれば感染確率は低くなると思われます。しかし、それ自体が新たな利益を生み出す可能性も低いとみています。

新型コロナの影響が長引く中では、今を乗り切るための対策と同時に、新しいチャレンジをしていく事業者を後押しし、新たなビジネスモデルを生み出していくことが、結果的には、事業者を守ることにつながると考えています。

感染防止ガイドラインの使い道については、もう一度考え直していただきたいと訴えていきたいと思います。

4.社会構造の変革を促し、直面する危機を乗り越える取組 2億円

この予算の少なさを見ただけでも、未来に向けた思考ができていない都庁の実態が見えてきます。都立学校のICT環境については、特別支援学校におけるICT環境整備を1か月前倒し、令和3年3月から始めるための予算です。

また、テレワーク東京ルールの普及啓発ムーブメントについては、テレワークを継続する企業に宣言をしてもらい、表彰する取組です。似たような制度が都にはありますが、表彰制度がどれだけ社会変革を促してきたのかよく分かりません。

テレワークが定着しない要因として挙げられる社内風土・ルール(業績評価含む)や仕事の切り出しの課題、あるいは自宅でのテレワークは現実的に難しい家庭環境といった点にはどう働きかけていくのか。

社会構造の変革を起こすために必要なのは、空気(機運)ではないと思うのですが。。。

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というわけで、長短両面のある補正予算ですが、約1か月間の審議を経て、採決へと向かいます。

これまでの取組の総括や検証の意味合いもこめた質疑とあわせ、より良い取組となるような提案を重ねていきます。

ご意見お待ちしています。


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2020年9月5日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログをご覧ください。