京都の学芸出版社の本は、どれも素晴らしいのだが、この本は特に秀逸。
カルビー(株)の元社長・松尾雅彦さんの「スマート・テロワール 農村消滅論からの大転換」
カルビー1社で、7,000ヘクタールの農地と契約し、「ポテトチップス」や「じゃがりこ」などのポテトスナックを年間約1000億円売り上げているが、供給過剰となった水田100万ヘクタールを畑作・畜産に転換すれば、約150倍の年間15兆円の産業となり、自動車業界の年間輸出額12兆円を超えると力強く主張する。
大豆や畜産などの食料自給率が低いことは、むしろ伸びしろがあるチャンスと捉える。
そして、先に成熟化したイギリスやフランス、ドイツ、アメリカなどを例に出しながら、成熟化した日本経済の復活は、農村経済の復活しかないという。
農村が自給圏を支える基礎となるためには、プロセスイノベーション、プロダクトイノベーション、マインドイノベーションが必要だという。
品質をどうするか、どのような加工をするのか、倉庫を持てばいいのか・・・第一線の経営者として、アメリカやヨーロッパを視察し、研究を重ねてきたので、とても説得力がある。
更に、パッチワークの農村風景を守るために「日本で最も美しい村」連合を立ち上げ、電線や電柱、看板を撤廃し、景観条例の制定を進める。そうして創ったアルカディアこそ、地元の誇りであるし、質の高い観光や地元の加工食品の消費につながるという。
理論と実践、哲学と現実が融合していて、とても興味深い。この美しく、力強い考えを広げていきたい。
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2020年9月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。