安倍総理辞任:そこに、もっと深い理由がある

安倍総理は7年8ヶ月、私は7年6ヶ月で辞任カードを切りました。実は今回の安倍総理の辞任表明、私だからわかると自負するところがあります。

昨日のブログで、安倍総理の路線を継承する人を選ぶために、あの辞任カードと言いましたけれども、もちろん安倍政権の路線を支持している人も支持してない人もいるとは思います。安倍総理としては自分の趣味でもなく好き嫌いでもなく本当に日本にとって必要だと思ったことをやってきたんだと私は思います。

私自身は安倍政権については、外交安全保障、これは本当によくやったと思いますね。特に日米同盟を深化させた。これは、別にトランプ大統領に取り入ったということではなく、トランプ大統領の前から継続して取り組んできたし、またああいう性格のトランプ大統領にそれこそぐっと近づいて、そして日米関係を他の国よりも今非常に良好なものにしているというのは、これ日本の近未来にとっては極めて重要です。

一方経済、これまでにもよく取り上げましたけれども、金融緩和や財政出動の二つはよくやりました。しかし、ビジネスチャンスを作るための役所や業界団体などが改革に強く反対し、緩和や撤廃が容易にできない岩盤規制改革はそれほどやっていなかったとも思います。また地方創生も、本質的に地方の自立に繋がるようなことはできていません。

しかし、冒頭にも言ったように、外交・安全保障、これは世界が今大きな転換期にある中で、本当に重要で、いざというときにドタバタしても始まらない。そこに手を打ったのは大きな功績だと思います。

さてそれがなぜ辞任と関係あるのか。それは11月のアメリカ大統領選挙ですね、今のところ民主党バイデン候補かトランプ大統領よりも支持率がリードしている状態です。

バイデン氏を支持 51%
トランプ氏支持  43%
※CNNの委託を受けた世論調査会社SSRSによる調査

バイデン氏が勝とうが、トランプ氏が勝とうが今回の辞任というのは、日本にとってどちらに転んでもいい形にするというのが安倍総理の込めた思いだと思います。すなわち、バイデン氏が勝てば世界で最もトランプ大統領と親しい関係にある安倍総理として、そしてまた日本外交としてはやりにくくなるわけですね。従って、大統領選の前に日本の総理大臣が代わり、今後の日米関係は新首脳間で進めていくという形にするためです。

仮にトランプ大統領が2期目の当選を果たしたならば、安倍総理としては新総理の後見人的立場として、要は通訳的な役割が果たせますし、引き続き日米関係に尽力ができます。またはっきり言って進展のなかったロシア外交ですけれども、これも新総理が誕生した後、安倍総理にはプーチン大統領との橋渡しができるわけです。

そのためには両院議員総会、国会議員による選挙で新総裁を選び、そのためには先週も言ったように安倍政権の路線継続をできる人を選ぶ必要があります。そのためには、総理の出身派閥である最大派閥細田派がしっかりとその候補をサポートすればいいわけです。

とは言っても、今ひとつぱっとしない岸田さんではなく、安倍政権の全てを知っている菅さんでいこうと、極秘の極秘で二階幹事長とは話をしたと思います。

安倍総理の持病である潰瘍性大腸炎の最初は本当だと思います。だからあえて先月17日、24日に世間に見える形で病院に行ったのでしょう。そのプロセスがあった上で、13年前に投げ出しと批判されたのと同じ病気を理由に突然の辞任。病気が理由で政治判断に間違いがあってはならないと言われれば、ある程度理解は得られると考えたでしょう。それでもまた批判は受けるそれも覚悟の上でしょう。

今回の辞任は病気で体が、体力が落ちていく。それでも、余力を残しということでしょうね。
新総理をサポートするということ、それはすなわち、引き続き日本のために働いていこうという、安倍総理ご本人の思いと決断です。


編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。