人材派遣のパソナグループの本社機能が淡路島へ移転というニュースが話題になっています。同社の本社は東京の大手町にありますが、本部機能の1800人のうち、3分の2にあたる1200人を2024年5月までに異動させていく予定としています。
人材派遣会社として「働き方改革」の先頭を走るように見えるこの動きですが、社員の本音はどうなのでしょうか。
中には東京出身で地方に住んだことの無い人や、関東圏にマイホームを購入している人もいるはずです。いきなり、知らない場所に転居して仕事をすることには、大きな抵抗があるはずです。しかも、転勤のような期間限定ではなく、本社機能の移転となれば、退職するまで永続的に淡路島に住むことになってしまいます。
これは社員にとってのリスクであるだけではなく、会社にとってもリスクが大きいと思います。
淡路島への移転を喜んでいる人よりも、その唐突な決断に戸惑っている社員が多いと思います。いつどの部署の誰が異動するのかといった情報ばかりが気になって、浮足立ってビジネスに身が入らなくなるでしょうし、家族に反対される人もいるでしょう。社員のモチベーションは、恐らく下がります。
転職を真剣に考える人も増えると予想します。優秀な社員ほど他社からの引きも強く、転職しやすいでしょう。淡路島には「仕方なく行く」という社員ばかりになってしまう可能性もあります。
かつて、東京の大学が郊外にキャンパスを移転するのがブームになったことがあります。しかし、その代償は大きなものになりました。優秀な学生に敬遠されるようになってしまったのです。最近は、郊外に移転したキャンパスが都心に回帰する逆の動きが起こっています。
今回の本社移転が、大学のキャンパス移転と同じ結果になるのではないかというのが私の見立てです。
地方にオフィス移転される「サラリーマンリスク」を回避するには、別の会社に行っても通用するスキルを磨き続けて、会社を選べる立場を維持する。あるいは、独立して自分でオフィスを決められるようになる。2つの方法しかありません。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年9月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。