メキシコ大統領が汚職撲滅も、弟が資金受領のブーメラン

アムロ大統領(メキシコ大統領府サイトより)

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(アムロ)が大統領選挙で汚職を厳しく取り締まることを公約にしていた。2019年度の腐敗国別認識指数においてメキシコは180か国の中で130位にランキングされている。因みに、ラテンアメリカでこの指数の一番高い国は173位のベネズエラだ。(参照:globalnote.jpwwwhatsnew.com

先月20日、エンリケ・ペーニャ・ニエト前大統領の政権時にメキシコ石油公社(PEMEX)の総裁を務めたエミリオ・ロソヤ・アウスティンが刑の軽減を求めて63ページに亘る供述書を作成した。

その中で、これまで3人の大統領並びに13人の議員が彼の犯罪に絡んでいることを明らかにした。この3人の大統領というのは、エンリケ・ペーニャ・ニエト前大統領とフェリペ・カルデロンとカルロス・サリーナの2人の元大統領だ。

国際指名手配されていたロソヤがスペインで逮捕されてメキシコに送還された時からこのロソヤ事件はアムロは自らの選挙公約であった汚職の取り締まりの一環になると考えたようで、特に前任者ペーニャ・ニエトへの批判を強めていた。

ところが、アムロの前に「ブーメラン」現象が起きた。ロソヤの供述書が法廷に提出された正にその日にアムロの弟ピオ・ロペス・オブラドールが封筒に入った200万ペソ(960万円)を受け取っている映像がデジタルニュース『ラティス』で取り上げられたのである。(参照:latinus.uselpais.com

アムロ大統領の弟の現金受け取りの現場(ラティスYouTubeより)

なおこの映像は2015年に撮られたものであるが、その中で彼の兄であるアムロの選挙活動を支援するためにチアパ州で集めた資金であることが封筒を渡しているダビッ・レオンとピオ・ロペス・オブラドールの会話から明らかにされたのである。ダビッ・レオンはもう1年半も前からアムロに資金提供していることが両者の会話の中から明らかにされている。ちなみに、レオンはアムロが大統領になってから薬品配給公社の会長に就任している。

同年6月のビデオではレオンがとピオ・ロペス・オブラドールの自宅を訪問して100万ペソ(480万円)が入ったパッケージを渡している映像を見ることができる。両者の会話の中で、レオンは「我々が協力していることを君の仲介を通してやっている。それをライセンス取得者(アムロのこと)が知るようにしてくれ」とピオに頼んだ。それに対して、ピオは「兄貴、兄貴、彼はそれをもう十分なほどに知っている。しかも、私の方からも伝えている」と答えている。

更に同年5月の別のビデオでは二人はあるレストランで会合し、レオンが今度はオレンジがかったパッケージを渡した。ピオは黒い表紙の手帳に何か記帳しながら支払いが遅れていることに不満を表明し、さらに3万ペソが不足していることをレオンに伝えた。レオンは翌月渡すことを伝え言い訳をした。それに対してピオは「わかった、OKだ」と答えている。

この一連の映像が明らかにされてからアムロは、この資金の出どころについては知らないと記者会見で述べて、選挙委員会にもそれを申告していたのかどうかは関係者でないとわからないとも述べた。

公開されたビデオは検察に渡すように指示したことも明らかにし、彼の弟とレオンには供述して事実を言うように伝えたという。

一方のレオンは2013年から2018年までコンサルタントの仕事していた関係から、アムロの政党を支持するのに集会やその他の政治活動をするための資金集めをしていただけだと語っている。

アムロはロソヤ汚職事件と比較して汚職に絡む金額の桁が違うことから同一視されることをを避けようとした。ロソヤの汚職事件は2億ドル(210億円)の汚職、彼の弟が絡んだ事件はおよそ200万ペソ(960万円)の規模だとした。しかし、この200ペソ以外に資金が渡されていたこともビデオで明らかにされている。

アムロがメキシコ自治区のトップだった時も彼の協力者がアムロのために企業から資金をもらっていたのが2004年の映像で明らかにされていた。アムロがこれまで汚職に全く染まっていなかったという確証はない。

今回のアムロの弟が資金を受けとっていたということは、今後のアムロの汚職の撲滅への取り組みに支障を来すのは必至だ。