新聞の折り込み広告には毎日のように不動産のチラシが入っています。不動産価格の動きを知るのに、有益な情報が入っているのでチェックするようにしています。
今朝のチラシには港区のタワマン(タワーマンション)の売却情報が掲載されていました。賃貸に出している物件をそのままオーナーチェンジという投資用物件ですが、年間の家賃を購入価格で割った、いわゆる「表面利回り」は3.24%。これは、投資用物件としてはかなり低い投資リターンです。
投資用物件として比較すれば、同じような立地の中古ワンルームマンションであれば、4%台前半の利回りが確保できます。この物件に投資するのであれば、2000万円前後の中古ワンルームマンションを7戸くらい購入した方がリスク分散され、利回りも良くなります。つまりリスクの割にリターンが低いと言えますから、家賃がこのまま上がらなければ、価格は割高と言えます。
マイホーム用の物件として考えると、1億円を超えるような高額物件になると、購入できる人はかなり限られてきます。元々資産を持っている富裕層はともかく、年収数千万円の外資系サラリーマンや勤務医などが購入者になりそうですが、どちらもコロナショックによる雇用不安や収入低下リスクが高まっています。以前のように大きな借り入れをして住宅ローンで購入するという人の数は減っているはずです。つまり実需からみても購入者が少なくなり、需給関係から価格はもう上がらないと言えるのです。
しかも、この物件は賃貸中ですから、いつ退居するかわかりません。マイホーム用として購入しても、いつになったら住めるかわからないという問題があります。
更に、金融機関もこのような高額物件購入に対する融資には慎重になっていく可能性があります。年収の高いサラリーマンほど、コロナショックによる収入減のリスクが高いと考えるのが自然だからです。
価格に対するプラス要因を敢えて挙げるとすれば、金利です。借入金利が金融緩和が更に追加され一段と下がることがあれば、タワーマンション価格には追い風となります。しかし、市場金利が下がってもローン金利にどの程度波及するかは不透明ですから、あまり期待はできません。
今まで上昇のスピードが急激だった都心部のマンションほど、調整圧力がこれから強まるのではないかと思います。
編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。