参議院のドンと言われていた村上正邦氏の訃報に接した。
享年88歳。
KSD事件で実刑判決を受け、服役されたが、出所後も政治の世界で隠然たる力を発揮されていた実力者の一人である。
私と村上正邦氏との関係については、知る人ぞ知る、知らない人は知らない、というところだが、ここでは詳細はあえて書かない。
村上正邦氏は、多くのことを語らないまま、墓場まで持って行かれることにしたようである。
最近の政治家は、何でも語ってしまいがちだが、古武士のような風格がある人は何も語らず、あらゆる咎を自分の一身に引き受けて黙って去ってしまうようなところがある。村上正邦氏は、そのような古武士の一人だったことは、間違いない。
私が比較的頻繁に村上正邦氏と接するようになったのは、村上正邦氏が受刑期間を終えて出所し、「日本の司法を正す会」という会を設立されてからである。
評論家の青木里氏が司会し、私が一弁護士としてコメンテータのような役回りを引き受け、週刊金曜日が「日本の司法を正す会」の座談会を記事として掲載する、というようなことが何年か続いたような記憶がある。
「日本の司法を正す」という会の名称自体に村上正邦氏がご自分の刑事事件についてどんな思いで向き合われていたかお分かりになるのではないか。決してご自分が受けられた判決には納得されていない、ということである。
しかし、すべてを受け容れて黙って服役された、ということである。ひょっとしたら、どなたかを守るためだったのじゃないかな、と改めて思っている。
政治の世界には、しばしばそういうことがある。
そうでなければ、出所後も政治の世界であれだけの存在感を示すことが出来るはずがない・・。
改めて、故人のご冥福を心よりお祈りする。
合掌
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2020年9月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。