今週月曜日、2020年夏季オリンピック・パラリンピックIOC調整委員会委員長を務めるジョン・コーツ副会長が、来年に延期された東京五輪は「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的な大流行)に関係なく開催され、同感染症を「克服した大会」になるだろう」と発言しました。「パンデミックが有無に関係なく」と言うけれども、新型コロナウイルスが秋冬以降に仮に世界で猛威を振るってたとしても強行突破するとは驚きです。
コーツ氏は東京オリンピックの準備状況を監督するIOC側の調整委員長でもありますので、この発言だけ聞くと、「正気か?」って思ってしまいます。ただ、この発言は「日本側はさまざまな対策を講じなければならず、やるべきことは山ほどある」と続くんですね。日本側と断っているところを見ると、やるか、やらないかは日本が決めろってこととも受け取れます。
それは日本側はやりたいと考えているに決まってますよね。私だって招致運動をずっとやってきて、2020オリンピック・パラリンピックの顧問ですから、やりたいですよ。でも現状は厳しいと思います。ワクチンも治療薬もまだ出ていないわけですし、仮に年末にかけて承認されたとしてもそれが世界各国の各国民に行き渡るかということです。
鈴木俊一前オリンピック担当大臣は同じく月曜日に、「仮に感染症によって十数カ国が参加できなくても、数の上から言えば、五輪として成立する」と話していました。これ実態としては発展途上国になると思いますね。仮に一部の国に、出場が許可されなければその国のオリンピック委員会や選手が納得するかということですし、また逆に安全性を考えて参加を見合わせる国が出てくるかもしれません。実際、延期決定前の今年3月には、カナダのオリンピック委員会は新型コロナウイルスのリスクを考えて選手団を派遣しないと表明していました。
いずれにしてもコーツ氏も鈴木氏も「開催する」とは言ってますけれども、安倍総理が言った「完全な形での開催」ということの否定であって、その点はあまり触れられてはいません。私は現実論として開催は厳しいんじゃないかと見ているわけですけれども、ちなみに民間はどう考えているか、その調査結果があります。
東京商工リサーチが、7月28日~8月11日にインターネットで実施し、3327社が回答した調査では、来年のオリンピックについて「中止が望ましい」が30.7%、最延期が22.4%と、双方を足し合わせると半数以上が開催を望んでいないという結果になっています。「予定通り開催」は22.3%ですから民間の機運もかなり下がっていますね。
プロ野球やJリーグ、アメリカの大リーグなどのように観客席を半数以下に抑えて開催するということも考えられますが、そもそも選手が来日できるのか、一部競技で予選ができるかということでしょう。
大会は縮小すればその分収入が減るということになります。コロナ禍で世界の企業が傷ついており、スポンサー料を期待できるかという問題もあります。仮にそうなれば、減収分の費用負担など、かなりの調整が必要になります。私はまさにここがポイント、すなわち費用負担の問題があるからだと考えます。IOCもJOCも中止や再延期については言い出せない状態で今後も開催すると言っていると思います。
正直、私は厳しいと考えていますが、100歩譲っても秋冬以降の第2波次第でしょうね。それでもコロナウイルスに関係なく実施するわけにいかないと思いますが、どうでしょうか。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年9月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。