区長出席、破綻しても“世田谷モデル”は撤回せず

稗島 進

昨日(9月10日)、いわゆる“世田谷モデル”について質疑するため、2つの委員会が臨時で開かれた。

区側の修正に次ぐ修正で補正予算案の提出がずれ込み、異例の開催となった。まず、午前中に福祉保健委員会で、最終案と目されるものが出された。午後の企画総務委員会には、これまた異例中の異例、保坂区長自らが出席し、冒頭、提出が遅れたことを陳謝した。

“世田谷モデル”の内容は、これまでブログで何回も説明してきたので、ここでは繰り返さない(お時間ある方は、バックナンバーをご覧ください)。

今回、新たに追加されたものは、レジュメ右側②「社会的検査」の対象者に、「一時保護所、児童養護施設等の職員(約400人、入所予定者含む)」と、陽性者が発生した場合の濃厚接触者以外の職員を「当該施設の利用者」まで拡大したことだ。ほかにも細々とあるが、詳述しない。問題の所在はそこにはないからだ。

そもそも、「誰でもどこでも何度でも」と区長がド派手にぶち上げた“世田谷モデル”はどこへ行ったのか、ということだ。

「ずいぶん中身が変わっているではないか」との委員の指摘に対して区長は、「検査対象者は絞り込んだが、変質はしていない」と言い切った。

しかし、私の知るあるご婦人にこのことを伝えると、「私は(検査を)受けられないのね」とがっかりしていたが、これが多くの区民の感覚なのではないか。なんせ、介護事業所員や障害者施設職員など23000人のエッセンシャルワーカーしか対象でないのだから。

区長は、「『誰でもどこでも何度でも』を目指すことは、検査のハードルを下げることになる」と言うが、特定の業種の人だけ検査をするというのだから、逆にハードルを上げたことになるのではないか。私も含めて、90万人近い区民は置き去りである。

保坂区長(世田谷区YouTube

このことを、副区長は「区長にしっかり説明してもらう」と答弁したが、結局、区長は言い訳して非を認めなかった。区民のことを考えていると言う割には、やはり自分のことしか頭にないことは明らかだった。テレビで喧伝してから、一向に議会に説明しなかったことも問題視されたが、区長の議会軽視は今に始まったことではなく、過去にも厳しく指摘されてきたことである。何ら反省してこなかったのだろう。

それに、頼みとしていた東大先端研の児玉龍彦名誉教授のプール方式も採用ならず、自分の願望だけで見切り発車したことも、多額の税金を使う重みを考えれば、見込み違いでは許されない。私が前から指摘していたように(コチラ)、児玉名誉教授が使用していた「世田谷区有識者会議議員」という肩書についても、今日の委員会で区が「存在していない」とはっきり否定した。何から何までいい加減である。

本当にこのまま、破綻した“世田谷モデル”に4億円もの血税を投入してよいのか。区が説明するように、その目的が「感染に伴う重症化を避ける」ことや「クラスターの抑止」にあるのならば、これまでの保健所を中心とした「従来型検査」(レジュメ左側①)に、そのような恐れのある特定の人々の中で、無症状者でも検査できるようにするというように、その機能の拡充、強化に努めるべきなのだ。

PCR検査は陽性か否かを判定することを主眼としているもので、陰性証明に使用するべきものでないことは、真っ当な専門家ならば、みな言っていることである。それに、数ヵ月をかけて1回検査しても、何の安心にもつながらない。これからのインフルエンザの流行を考えてみても、保健所や医師会をサポートする体制をこそ構築すべきなのだ。

国や都もその方向で動いているのだから、区だけでやらず、連携して財源も確保すればよい。何を慌てふためいて世田谷区だけ目立とうとしているのか? 目的がいかがわしいから、内容が二転三転、ブレまくっているのである。

いずれにせよ、ようやく昨日で、区長側の説明が終わった。これを踏まえ、わが会派(無所属・世田谷行革110番・維新)は対案を練りたい。来たる採決は、9月18日の企画総務委員会で行われる。それまでに細部をしっかり詰めていく。