自民党総裁選挙は、菅義偉官房長官が377票を獲得し、2位は89票の岸田文雄政調会長、3位は68票で石破茂元幹事長だった。
地方票は菅氏が89票、石破氏は42票、岸田氏の10票。国会議員票では、細田派(98人)、麻生派(54人)、竹下派(54人)、二階派(47人)、石原派(11人)の計5派や無派閥議員(64人)から288票。岸田氏は岸田派(47人)や無派閥の谷垣グループなどから79票(20.1%)。石破氏は石破派(19人)などから26票(6.6%)にとどまった。
まず、地方票は世論調査における自民党支持層の意向がそのまま反映されるという前提で、石破氏が30票余り、岸田氏は地元広島の3票にとどまるのでないかとの見方があったが、そもそも党員構成は一般の自民党支持者とだいぶ違う層だし、関係の国会議員や関係団体の頑張りで票が伸びることがあり、上記のような予想より石破氏や岸田氏が多いのは予想外でない。
それに対して、議員票は岸田氏の多さも、石破氏の少なさも予想外である。石破氏は2018年の総裁選挙で、73票の議員票を獲得した。そのときの石破派は、やはり20人ほどだから、竹下派などから57票を獲得したのである。それが今回は7票で、しかも4人は推薦人だから、3人しか表向きの支持者以外から投票してもらえなかったのである。
これは前回分裂しながらも形式的には支持した竹下派がほぼなにも票をまわさなかったことを意味する。
一方、岸田氏は自派の47票に他派からの推薦人5人に加えて27票を獲得したはずである。細田派あたりが石破氏を2位にしないために回したという説もある。口が軽い政界でそんなことをしたら、情報がすでに出回っているはずだが、今のところ、その気配はない。
安倍首相が側近に対して依頼したという説もあるが、そんなことしたら絶対に漏れる。となると、意外に議員で菅独走を好まない人がこっそり岸田氏に入れたのかもしれない。
前回、石破氏に入れた中には、安倍首相への反発からという人がかなりいるはずだ。ただし、彼らも石破氏を支持していたわけでもなかった。それが今度は、岸田氏という選択肢があったので、そちらに回ったということか。
このほかに、古賀氏と麻生氏の対立、森喜朗氏がバランスを取るために岸田氏に回したとかいろんな説があるが、最初に書いた細田派がまとめて20票以上もの票を組織的に回したのではないような印象もある。
そういう意味では、前回、極端なアンチ安倍、プロ野党的な物言いを展開して議員票を73票獲得した石破氏が、その後、もう少しマイルドな路線に切り替えることを怠ったがゆえの墓穴だったのでないかと思う。
朝日新聞など味方に付けておいても、裏切られるだけなのだ。