スペインで新型コロナ感染者が再び急増している。
封鎖が解除された7月からの感染者の急増は、特に若者の間で広がっている。マスクをせずに集まって飲み会をやったり、ディスコに行って感染するというのが顕著である。若者の間に、自身が感染することで、家族や周囲、さらには経済回復に多大なマイナス影響をもたらすという認識が欠けているのが問題だ。
3月から現在までの感染者数は、64万人となる。
マドリード州では、首都内の一部地域とその周辺の都市の移動制限が、今月21日に再発令される。
新規感染者の増加でスペイン経済の今年後半の回復は完全に断たれることになった。スペイン経済の脆さは次の4点に依存している。
- スペインの企業の95%は中小企業で、しかも零細企業の割合が大きい。
- 観光サービス業に多く依存している。
- その為、観光シーズンの期間は雇用が増えるが、シーズンオフは減少する。雇用が年間で安定していない。
- 国の負債が大きい。現在GDPの95%であるが、パンデミックによる歳出で今年末には120%にまで到達すると予測されている。財政赤字も10%を超えることが予測されている。
スペイン経済の成長は1990年代から始まり2010年頃にその頂点に到達したが、この成長を支えていたのは、建設業と観光業である。この2つの産業が、それぞれGDPにおいて12%の貢献をしていた。
ところが、バルブ景気で発展していた建設業が崩壊して、唯一観光業だけがスペイン経済成長の機関車的役目をになった。昨年は外国から年間で8300万人の観光客が訪れ、スペインは世界2位の観光国となっている。
スペインでは、いったん封鎖が解除された6月中旬の時点で、外国からの観光客の訪問が期待されていた。ところが、ここに来て新規の感染者が急増しているのを見たヨーロッパの観光客は、スペイン訪問を控えるようになった。
また、スペインのホテル業界でも封鎖解除のあと営業を再開したが、採算ベースに乗るだけの訪問客がいないと判断して閉めたホテルも多くある。全国にあるホテルの20%は依然閉めたままであるという。
ホテル業界では今年の売上はよく見積もっても、昨年比の50%だと予測している。バルとレストランの飲食を含めた業界全体では、90万から110万人の職場が失われる可能性があるとされている。
例えば、6万5000軒のバルが閉鎖になると予測されている。スペインにはバルとレストランが27万8000軒あるとされている。即ち、20%余りが廃業するようになると予測されている。(参照:elespanol.com)
休業補償を受けている一時休職者と失業者の数は、5月は599万人と統計されていた。それが6月には513万人に減少。ところが、休業補償を受けている一時休職者の内の120万人は職場に復帰する可能性はなく失業者になると推測されている。現在までの失業者はおよそ325万人。それにこの120万人を追加すると445万人。スペインの就労人口は2300万人ということから今年末までには失業率は最低でも19%になるということになる。即ち、新規感染者が今後も増加して経済がさらに停滞すると失業率は20%を超える可能性も十分にあるということである。
この中に加えられていない地下経済で働いている人たちもコロナ禍で職場を失っている人が多くいるはずだが、それは統計できないのが実情である。しかし、スペイン経済の20%は地下経済に依存していると推察されていることからそこで働いている人の数も相当な数であるというのは憶測できる。(参照:libremercado.com)