在宅ワークの広がりで、郊外はますます不便になる

内藤 忍

日本経済新聞によれば、西武鉄道が終電の終着駅の到着時刻を20~30分繰り上げる検討をしており、来年春にもダイヤを改正する予定と報じています。既にJR東日本も終電繰り上げを表明しており、各社に波及していくことが予想できます。

(写真AC:編集部)

(写真AC:編集部)

終電繰り上げの背景にあるのは、言うまでも無く乗客数の減少です。在宅勤務の広がりによって鉄道利用者が減っているだけではなく、自粛ムードによって夜の外出をする人が減って、深夜の鉄道利用者が激減しているのです。

終電時間の繰り上げは、深夜の鉄道のメンテナンス作業の時間を長くすることができるメリットもあるようです。

しかし、鉄道の利便性が低下すると、郊外に住む不便さが更に高まっていくことになります。それによって、郊外に住むことを敬遠する人が増えれば、住民の減少というスパイラルが発生する可能性があると思います。

コロナショックによる働き方の変化によって都心ではオフィス需要が減退し、郊外に移り住む人が増えると言われています。ところが、郊外に移り住む人が増えても、鉄道などのインフラは利用者が増えなければ、運行本数が減っていくことになり、利便性は下がってしまいます。

在宅勤務の拡大は、公共交通の運行頻度を引き下げ、それが都心に住むことの相対的な利便性を更に高めることになるかもしれません。

確かにファミリー層は、子供の教育環境を考えて郊外に転居という選択肢を検討する人が多いと思います。しかし、在宅ワークが広がれば広がるほど、郊外は「陸の孤島」になって、それに耐えられない人たちが再び都心に回帰することになるのではないでしょうか。

コロナウイルスが社会をどのように変えていくのかを予想するのは、簡単ではありません。公共交通の変化が、社会に与える影響については注意深く観察する必要があると思います。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2020年9月24日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。