5年前の5月、ドローンが総理大臣官邸の屋上に落下した事件がありました。あの時は、首相官邸ということもあって警察の面子はつぶれ、事件後わずか20日で規制法案のベースが完成し、そして、2015年12月10日より通称ドローン規制法(改正航空法)が施行されました。
今、ドローンが何に使われてるかといえば空撮か趣味ぐらいです。しかし、数年先には荷物がドローンで届くことが現実になっているんじゃないかと思えるところまできました。
先月から今月にかけて長野県の山岳地帯で荷物をドローンで運ぶ実験が行われました。そして9月18日には、北安曇郡白馬村で白馬岳の登山口から5km先の山頂にある山荘へ荷物を運ぶ配送実験に成功しました。普通の平地であれば、ゆっくり歩いて1時間半もあれば十分に着く距離ですが、標高差が1600mもありますので歩けば7時間かかっていました。
しかし、今回の実験だとドローンでわずか15分で配送できたそうです。この実験は、楽天、ローソン、地元の長野県白馬村を含む11の企業・団体・自治体が参画して行われました。その楽天は、過疎地など物流が難しい地域向けに、2021年をめどに小型無人機(ドローン)の配送システムの提供を始めるそうです。
一方、アメリカでも連邦航空局(FAA)はAmazon系列のAmazon Prime Airにドローン配送が可能になる「航空運送業者」としての許可を出しました。今後、航空運送業者としてドローン配送サービスの実験と実用化を目指していくということですが、すでに先行してGoogleとUPS(アメリカ大手の運送会社)の2社にも許可が下りていますから、3社がしのぎを削っていくことになります。
これまでに自動運転の車について何度かお伝えしてきましたが、アメリカの場合は「これは便利じゃないか」「これやったら儲かるぞ」となれば開発競争が行われています。今やアメリカでは、ピザや宅配便の自動配達ロボットが玄関先までそれを届けるという試験運用がもう多く始まっています。
これに対して私は、日本では課題解決のために積極的に実験をして実用化していくべきだと思います。すでに買い物難民と言われる人たちが日本各地にいるわけですし、配送する運送業の人手不足もすでに現実化しています。特に過疎地や離島などに、生活必需品や医薬品などを届けるということも課題ですし、またwithコロナ時代、三密を避けるということも常態化していくかもしれません。
ところが日本は本当に規制が厳しく、ドローンももれなく規制対象です。もちろん、誰もが勝手に飛ばしたら事故が起きるからそれは理解できます。
現在は人口密集地などの規制外で、法律的な問題をクリアした場合、目視飛行すなわち操縦者が見える範囲の中でなら飛ばせるという感じです。
注意!
人口密集地での飛行には国交省の許可が必要で、他にも土地所有者の許可が必要であったり、自治体で禁止している場所もあるので、飛行には必ず事前の確認が必要です
しかし、過疎地に荷物を届けるとなれば、まさか人が乗るわけではありませんので、目視外飛行(人の目から離れた飛行)と飛行高度の制限を守りながらの自動操縦が必要です。政府も再来年の令和4年には都市部での目視外飛行の解禁を目指しているということで、官民挙げて積極的に取り組んでほしいと思います。
私は、規制が厳しいのは役人の感覚が鈍いからだと思います。また、日本の課題に先見性を持ってチャレンジしていくという精神がないということなどもあります。さらに、役所の権限、すなわち既得権になってるケースもいっぱいあるわけです。
菅総理は、規制改革・既得権の打破ということに並々ならぬ意欲を示しています。そのための河野太郎担当大臣の起用です。ぜひ、課題解決のために積極的にテクノロジーを使うそのために規制改革をしてほしいですね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2020年9月25日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。