半沢直樹。面白かったです。
私ごとですが、
銀行員として6年。
ベンチャー起業家として20年。
政治家として6年。
今シーズンの2つのストーリーでメインキャラクターとなる三つのグループ全ての気持ちが実体験としてよく分かるため、かなり入れ込んでしまいました 笑
銀行員時代の私は理想に燃えていて、半沢直樹と同じような経験を数多くしました。
支援していた取引先の成長の為に正々堂々と上司と議論し、ぶつかり、融資を実現したこと。人事部と渡り合ったこと。そして、
会議室に上司たちを全員集めて、一人で不正を暴いたこともあります。(詳細は「すべては一杯のコーヒーから」[2002年、新潮社]に掲載されています)
また、政治家時代には「国会議員も政党も国民の為にある」という(当たり前の)信念のもとに、執行部と所属議員を説得して迷走していた党を解党へ。。。そして、憲政史上初となった政党助成金の国庫返納も実現することができました。(詳細は「愚か者」[2016年、講談社]に掲載されています)
なぜ私が半沢直樹ばりに理想と正義だけを追い求めることができたのか。
私が格好良いヒーローだからではありません(むしろ泥臭い、失敗の繰り返しのようなダメ男です)
答えは簡単です。
最初から、そこで「退職までお世話になる」「出世する」「再選し続ける(政治家)」という考えが無かったからです。
「ダメなら辞表を出す。いざとなったらアルバイトでも、自給自足でも、何をしてでも生きていけるはず」と思って、その世界に飛び込んで行っているのです。
そう。いつでも辞めてやるという気持ちがブレない精神をつくるのです。
9月27日の最終回では、それを表す瞬間がありました。
「銀行員だけが仕事じゃない」
「必死に尽くしてきた銀行に、それでもお前なんかいらないって言われるならこっちから辞表たたきつけてやんなさいよ。サラリーマンの最後の武器でしょう!」
「仕事なんかなくなったって、生きていれば何とかなる。生きていればね」
上戸彩さんが演じる、半沢花(妻)のセリフです。
感動しました。私のまわりにはそんな風に優しく励ましてくれる人はいませんでしたから(人徳の差ですね 笑)
こういうパートナーがいて、最悪な事態になれば辞めてやる…銀行にしがみついて生きなくてもいいんだ…と思ってこれたからこそ、気兼ねなく闘うことができたのでしょう。
しかし、最後に気になるシーンもありました。
大和田常務に「頭取を目指せ!」と煽られ、それを約束してしまうことです。
人間は本当に弱い生き物で、最初はどんなに理想に燃えていても、「大臣になる」「社長(頭取)になる」と、組織内で出世をする目標を持ってしまうと、段々と守りに入ってしまうものです。特に日本社会の大組織で上に行こうとするならば、迎合と忖度なしでは実現不可能と言っても過言ではありません。
つまり、現実の話だとしたら、「頭取になりたい」と願った瞬間にあの信念の半沢は消えてしまう運命なのです。
とは言っても、フィクションの世界ではそれを打破して駆け上がっていく主人公の姿を見てみたいですね。既にシーズン3が待ちきれなくなっています。
そう言えば、昨日はネットで「これを見て銀行員を目指してくれる人が増えたらいいな」と書いてあるのを見ました。あのスタイルの銀行や銀行員はあと数年で無くなってしまう絶滅危惧種なので避ける方が賢明な気がしますが(違う形のバンカーなら存続します)、白井亜希子議員を見て「政治家になりたい」と思ってくれる正義感溢れるブレない若者が増えてくれたら嬉しいと思わずにはいられませんでした。
編集部より:この記事は、タリーズコーヒージャパン創業者、元参議院議員の松田公太氏のオフィシャルブログ 2020年9月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は松田公太オフィシャルブログをご覧ください。