令和ドラマの最高視聴率を叩き出した『半沢直樹』。悪役はどこまでも憎たらしく、最後は気持ちがいいほどの大逆転という日本人が大好きな勧善懲悪モノというだけでは片付けられない、多くの人を魅了するドラマだった。顔芸や俳優陣のアドリブもさることながら、実話をベースにした完成度の高いストーリーだったことが大変大きい。
そのベースになった実話、登場人物のモデル探しが話題を呼んでいるが、モデル探しをする前に、その前提を少し説明しておきたい。
帝国航空編はJAL再建と民主党がモデルであることは著者が認めている通りだが、この物語は、実話、原作、ドラマと三つのストーリーが存在する。
例えば、江口のりこ演じる白井亜希子国土交通大臣は、民主党とJALをベースに考えると当然前原誠司氏になる。ただ、女性であることや立ち振る舞い、経歴から察すると、アナウンサー出身の蓮舫氏や小池百合子氏、ポストが近いところで当時国土交通副大臣だった辻元清美氏などがモデルではと言われてきた。
特に、ドラマでは事業仕分けで話題になった「二番じゃダメなんですか?」をもじった「債権放棄じゃダメなんですか?」というセリフ、Go T0 キャンペーンに際して使われた「今じゃない」というセリフから蓮舫氏が有力だったが、終盤になって三原じゅん子氏の「恥を知りなさい」というセリフが飛び出すなど、色々な政治家の名言?が飛び出し、お茶の間を沸かせた。
そして、最後の最後は、ずっと悪役だと思われていた白井大臣の潔い決断を見て、当時総理を務めた鳩山由紀夫氏までもが「白井大臣みたいな方がいれば政治は蘇っていた」という発言が飛び出すほどで、結局「白井大臣のモデルは実在しなかった」ということで決着をみているようだ。しかし、これはドラマのお話。
原作では、これらの名セリフは登場しないどころか、白井大臣は総理に辞任を促され大臣を辞任して終わり、最後まで悪役で終わっている。原作の結末でいえば、先述の方々がモデルになっているという可能性は残る。(ただ、池井戸作品に共通して言えることだが、人物のモデルはいても特定できないように配慮されている。)
最後、実話はどうだったと言えば、JALタスクフォースは二か月足らずで成果をあげられず解散するが、前原国交大臣はこの件で辞任には至っておらず、ドラマに登場するほどの強硬路線だったわけでもない。ちなみに早々にJALは自主再建の道を諦め、会社更生法を申請し、銀行は債権放棄を受け入れ、上場を廃止し、経営の神様・京セラの稲盛和夫氏を会長に迎え再建するという道を辿っている。
箕部啓二幹事長も同様で、民主党政権をベースにするなら小沢一郎氏がモデルになるが、雰囲気などから前原誠司氏の後見人的ポジションだった仙谷由人氏などもミックスされているとみられるが、ストーリーの鍵を握る「舞鶴空港」「舞鶴ステート」がドラマでは「伊勢志摩空港」「伊勢志摩ステート」に代わっており、紀伊半島の反対側に位置する南紀白浜空港を彷彿とさせることから、和歌山県を地盤とする二階俊博幹事長がモデルという声が巷では増えた。
結局、どこまでも推理の域を出ないが、原作とドラマ、どちらをベースに考えるかによってモデルは変わってくる。実話から着想を得た原作、それをさらに進化させたドラマ、いずれも大変面白い話だが、「真実は小説より奇なり」これを機に今一度実話を紐解いてみるのも面白い。
『半沢直樹』ロスに送る 登場人物のモデルは誰?あの人とあの人のミックス?