デジタル化の壁:ハンコの次は、対面・書面原則の見直しを!

河野太郎行政改革担当大臣が行政手続きでのハンコ廃止に突き進んでいる。押印を求めている現行法の一括改正も検討するそうだ。

行政のハンコ廃止、一括法改正も検討 河野行革相(日本経済新聞)

新型感染症の蔓延以来、経済社会のデジタル化を妨げる壁としてハンコが繰り返し取り上げられてきた。この壁に穴が開きそうだ。

デジタル化を妨げる壁は「ハンコ」だけではない。「対面原則・書面原則」も壁としてそびえ立っている。

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例えば対面原則。公職選挙のネット投票も同じ。2年前にアゴラに記事を上げたが、投票率の低下に危機感を覚えた若手の国会議員がネット投票の導入を求めている。しかし、この実現には公職選挙法の改正が必要になり、国会ではまだ俎上にない。

民民取引も例外ではない。今まで、株主総会は会場に株主が集まる対面型で実施されてきた。しかし、総会でクラスタが発生するのを避けるにはオンライン化が望ましい。遠隔に居住する株主には自腹で旅費を負担するように求めているが、オンライン化すれば彼らにも発言の機会が与えられる。しかし、わが国では完全オンライン化はむずかしいそうだ。

「なぜ日本はできないんだ」という刺激的な見出しで、武田薬品工業社長の問題提起が記事になっているが、理由は法律にある。会社法第298条に「株主総会の日時及び場所」を定めなければならないとあり、この「場所」は物理的・地理的な場所の意味であると解釈されてきたからだ。しかし、ZOOM会議室のURLとパスワードも、「そこ」を特定できるという意味では「場所」に違いない。

 

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民民取引の書面原則。不動産取引がその典型である。重要事項説明「書」は、その名の通り「書面」である。宅地建物取引業法第35条によって、重要事項は「書面を交付して説明をさせなければならない」ことになっているからだ。

国土交通省も少しずつ動いている。事前に書面を渡してオンラインで説明する社会実験は2019年10月にスタートした。賃貸物件について重要事項説明書自体をオンラインで交付する社会実験も繰り返されている。

国土交通省は2020年7月に、不動産取引時に水害ハザードマップを用いて対象物件について説明することを義務化した。各地で洪水被害が頻発している現状を考えれば義務化は適切である。このようなことが書かれた重要事項説明書がスマートフォンやタブレットで事前に閲覧できないのは、不動産購入者の利益に反する。

10月7日開催の規制改革推進会議で、菅義偉総理大臣が全ての行政手続きについて書面や押印を抜本的に見直すよう指示した(参照:日経新聞 10/7)。この指示の下、民民取引を含めて、河野大臣が対面原則・署名原則の廃止に動くように期待する。